鏞記酒家(ヨンキー)は、創立者の甘穗煇(カム・シュイ・ファイ)氏の「ガチョウのロースト(焼鵝)」で世界的に有名な広東料理店。
かつては、数々の受賞歴を持ち、世界の国家主席たちも訪れた老舗中の老舗。英語も通じて、店員さんも非常に親切。
1942年に創業者がHKD5万(400万円)を元手に屋台で創業。ガチョウのローストが評判を呼ぶ。17歳から仕事を手伝う長男・健成氏が1973年に2代目を継ぎ、1978年には、このビルとなる。同年、ヴァージン諸島に持株会社を創設し、穗煇氏の妻10%、長男35%、次男35%、三男10%、長女10%とした。
2004年に穗煇氏が96歳で亡くなり、2007年には三男が急死し、次男が三男分を含めた45%を握る。母は長男に10%を譲るが、次男は自分の3人の子どもたちを取締役会に加入させて、実権を握り、長男を排除。
長男は、持株会社を解散させるか、自分の45%の株を買い取るよう高等裁判所に訴える。母と長女も次男側につき、次男は55%を握るが、長男の株を買うには、HKD9億が必要となる。
2012年に裁判が始まるが、原告の長男が66歳で亡くなる。当初は、持株会社がBVI法人で登記がヴァージン諸島のために、登録地の裁判所が下すことになるが、それを長男・健成氏の長男が不服と上訴して、裁判官全員が「法人はヴァージン諸島にあるが、役員は香港在住で売り上げも香港であることから、香港で処理するべき」と終結。買い取りが物別れに終わった場合、会社は自動的に清算されるとした。
2005年の香港ナビでは、創業者の3兄弟が仲良く写っている写真が掲載されている☟
鏞記は、ここ数年ミシュランの星を獲得していない。名物料理のガチョウのローストも、ブログ管理人的には、1羽や半羽を注文しないと、骨が多くて美味しくない。
香港は、物価が上昇中なので、日本で失われた30年を過ごすブログ管理人が1人で立ち寄るには、非常にコストパフォーマンスが悪いと分かっていても、ヴィクトリアピークへのハイキングと中環の人混みに疲れて、ゆっくり落ち着ける場を求めて、PM2:00過ぎにお一人さまで入店。
今回は1階のお一人さまコーナーではなく、2階の円卓に案内してくれた。鏞記は、普通にサービスが良くて、やっぱり落ち着く。こういう安心感がある。
お茶は水仙にした。美味しい。ホッとひと息。
お一人さま用の正宗炭燒燒鵝飯(ガチョウのロースト飯)のお肉は、1羽や半羽と違って、そんなに美味しくない。期待はせずに、それでもガチョウのロースト飯にする。不味くもない。ただ、大昔に食べたときの美味しさが物足りず、感動が少ない。
しかし、鏞記の皮蛋酸薑
(皮蛋
生姜)は、今も変わらず本当に美味しい。お家騒動があっても、ガチョウのローストの味が変わっても、皮蛋
生姜を食べるために、鏞記には行きたいと思うほど。お土産コーナーや香港国際空港店で皮蛋や子姜(生姜)が買える。ガチョウのロースト飯と皮蛋生姜、お茶、サービス料の合計HKD140.8。現在のローカル店やカフェの物価上昇に比べたら、鏞記のお一人さまランチ代は、そう高くないのかもしれない。
ちなみに、最高裁で軍配を上げた長男・健成氏の長男・崇軒氏は2014年に天后に「甘飯館」を経営して、祖父や父から受け継いだ味を守っているという。次男・崇轅も灣仔に「甘牌焼鵝」を開き、開業4カ月で「ミシュラン」で1つ星を獲得して、連日すごい行列。
次回は、行列覚悟で甘牌焼鵝に行ってみようと思う。
「鏞記酒家」