昔バイトしてた病院のナースステーションに、誰かが書いた落書きが張ってあった。
「結婚は人生の墓場なんかじゃない。人生の生き地獄です!」
それをなんとなく思い出した。
20年以上の付き合いになる幼なじみが、結婚した。
久々に会った彼女のお腹は大きくまるくなっていて、
「6ヶ月目なの」
と言って恥ずかしそうに笑った。
おめでとう。
相手は数年前から付き合っていた彼氏のケイタくん。
一度だけ会った事がある。
彼には趣味の車いじりで作ったかなりの額の借金がある。
しかも現在無職だ。
「妊娠がわかって、お互いの両親を交えて今後の話合いする時に、ケイタくん逃げていなくなっちゃって」
どうやら怖くなってネカフェに逃げて、数日後にのこのこ戻ってきたらしい。
「今は仕事してないんだけどね、最近一緒にハローワーク通ってるの。でもなかなか気に入る仕事が無いみたい」
妊娠中でつわり中の妻に毎回車を運転させて、自分はハローワークでぐだぐだして妊婦を4時間車内に放置。それをもう3ヶ月以上。
そんなに一生懸命ハローワーク通ってくれててよかったね。
「今は私の失業保険で生活してる。借金も返さなきゃだし生活かなりキツいけど、今すごく幸せなんだ」
そう言って本当に幸せそうに笑う彼女に、
よかったね。
としか言えなかった。
幸せの基準は人それぞれで、
他人の幸せは自分の基準では測れないし、
そもそも自分は他人の人生に口出しできるほど大それた人間ではないので、
彼女が見つけた幸せが今現在のそれだと言うのなら否定はしない。
それこそ個人の自由だ。
でも、
そんな自分は、冷たいのだろうかと。
数年前からそんな彼氏と付き合っていると知っていながらも、
自分が口を出すことではないと、
何も言わずに傍観していた自分は正しかったのだろうかと、
どこかのエラい占い師のように、
「あんた幸せになれないよ」
などど知った風に諭すのが正しかったのかと、
では彼女の幸せとは一体何なのかと、
幸せを決めるのは誰なのだろうかと。
そんな事をぼんやりと考えて答えは無いと思ったので考えるのをやめた。
ただ、
生まれてくる子供にだけは、何の罪もないので、
その子がずっとずっと幸せな人生を歩めますように、と、
ただただ願うだけ。