サルタナがやって来る~虐殺の一匹狼~ | B級パラダイス

B級パラダイス

健康優良不良中年が、映画、音楽、読書他好きなことを気まぐれに狭く深くいい加減に語り倒すブログであります。

久々の金曜深夜マカロニ鑑賞。またフランコ・ネロものにしようかなあと思いつつ
マカロニ聖書(DVDBOX)を眺めて、日本未公開作のこいつに決定!

image

サルタナがやって来る ~虐殺の一匹狼~<未>(1970)
UNA NUVOLA DI POLVERE... UN GRIDO DI MORTE... ARRIVA SARTANA
(CLOUD OF DUST...CRY OF DEATH...SARTANA IS COMING)

監督:アンソニー・アスコット(ジュリアーノ・カルニメオ) 製作:エドュアルド・マンサノス、ルチアーノ・マルチーノ 脚本:ティト・カルピ、エルネスト・ガスタルディ、エドュアルド・マンサノス 撮影:フリオ・オルタス 編集:オルネッラ・ミケーレ 音楽:ブルーノ・ニコライ
出演:ジャンニ・ガルコ、ニエヴェス・ナバロ、ピエロ・ルッリ、マッシモ・セラート、ホセ・ハスペ、ブルーノ・コラッツァリ、サル・ボージェス

このタイトルロールのサルタナ。マカロニウエスタン全盛期には、かの“ジャンゴ”に並ぶマカロニウエスタンキャラとして有名で、主演のジャンニ・ガルコの代表作として世界的にヒットし4本ものシリーズが作られたそうな。
そんなヒットシリーズなのに何故か日本では1本も公開されず、テレビ放映さえもされなかったらしく自分もまったく記憶が無かったシリーズだ。

ではつまらないのか?っていうと、これがまたなんで未公開だったのか理解に苦しむ面白さ!
ブーム終焉の70年の作品が故、復讐!仇打ち!ドロドロの因縁!的なストーリーは無し。無精髭に汗ギトギト、砂埃まみれの小汚い感じもなく黒いスーツに赤いネクタイ、黒いインヴァネス・コート(裏地は深紅!)という、ちょいとオシャレなギャンブラースタイルの正体不明のサルタナが、カジノで行方知れずとなった50万ドルの金貨の在り処を探す事件解決探偵風味のストーリーなのも珍しい感じなのだ。

うーん、カッコいいなあ、ジャンニ・ガルコ!
マカロニ名作ポイントである音楽もブルーノ・ニコライだから安心。ちょっとモリコーネ風味のカッチョイイ音楽にのって、悪徳保安官だの、南軍くずれの山賊一味だの、自称連邦調査官だの、50万ドルの持ち主の未亡人だの、この金を狙う連中に邪魔されながらも、サルタナがひょいひょいと謎を探り、事件の真相を暴く快作であった。

特筆すべきはマカロニ末期作によくある凝った小道具の数々。本作にも靴の踵に隠し持ったコンパクト吹き矢や、カスタム・デリンジャーが出てきたり、協力者のじいさんが作ったアルフィーという名前のからくり人形がカタカタ動いて火を吹くわ弾を撃つわ敵の元にダイナマイトを運ぶわと、小道具がいちいち楽しいのもポイントだ(笑)。ちなみにこのアルフィー 、ウルトラマンに出てきたダダを彷彿とさせる顔だけみたいな代物で、こいつが動いて寄ってきたら迷わず撃ちたくなるのだがなあ(笑)

で、最大の小道具がマカロニ史上恐らく最大最強の秘密兵器、通称「皆殺しオルGUN」!
そのまんま「オルガン」型の「GUN」なのだ。もはや小道具ではなく大道具だ!(笑)
こいつの前に座り、山賊を迎え撃つサルタナ。怪訝そうな山賊たちに必殺の調べと共にボタンを引けばパイプが倒れて銃身となり迫撃砲に!さらに4本倒れてマシンガン!ならばと横から攻める山賊たちには今度は横に倒れて一撃!うわははは、なんじゃこれ!最高だ!(笑)
あんまり楽しいんで予告編貼っておきます。笑ってやってください。あ、ちなみに実際のジャンニ・ガルコは「オルガンは弾けない!」とおっしゃってました(笑)。



話としては別にコメディタッチでもないのだが、ノリとしてはミシン型の武器「ミシンGUN」が出てくる、俺にとっての傑作「荒野の無頼漢」やリー・ヴァン・クリーフの「西部悪人伝」に似ている雰囲気。あ、良く見たら監督「荒野の無頼漢」と同じだった(笑)。そうか!好きなんだな、こういうの。
そう言えばちょっとオシャレで黒づくめ、髭をたくわえたサルタナの姿は、「西部悪人伝」のクリーフ演ずるサバタのスタイルそっくり。変な武器もいっぱい出てきたが、考えてみればサルタナシリーズが先にヒットしていたわけだから、こっちがむしろ元ネタでサバタシリーズがパクリだったのね(笑)。

「サルタナ」ってキャラは「砂塵に血を吐け」という作品でジャンニ・ガルコが演じた悪役で、同作では主人公にきちんと殺されるのだが、その後スピンオフしたのか単独主演として復活したとのこと。
1作目「SE INCONTRI SARTANA PREGA PER LA TUA MORTE(サルタナに逢ったらお前の死を祈れ 」」(1968)がヒット、その後監督がアンソニー・アスコットに変わり、
2作目は「SONO SARTANA, IL VOSTRO BECCHINO(俺はサルタナ、お前らの墓堀人だ)」(1969)、
3作目は「BUON FUNERALE, AMIGOS!...PAGA SARTANA(友よ、良い葬式を...葬式代はサルタナが支払う)』(1971)
とシリーズになったが、ジャンニ・ガルコが最初からこの役を気に入って磨き上げたらしく、特典ディスクのインタビューでもその誇りを今でも持ったいい顔してたな。
それにしてもこの「サルタナがやって来る~虐殺の一匹狼~」も「渦巻く砂塵、死の叫び… サルタナがやって来る」と、どれも長い原題だな(笑)。
で、シリーズ最終作と思いきや、このあと前述の荒野の無頼漢のジョージ・ヒルトン主演で第5作として『C'È SARTANA... VENDI LA PISTOLA E COMPRATI LA BARA(俺はサルタナ、貴様の拳銃と棺桶を交換だ)』(1970)があるそうだ。

なんにせよこれだけ色んなマカロニ未公開作がDVD化されたのに、世界的に人気のこのシリーズがされないのはやはり権利関係が複雑なのかなあ?この「サルタナがやって来る」はシリーズ最高傑作とのことだが、最初から007の影響を受けたガジェットがあり、ミステリアスな作劇になっているという1作目と、監督がお気に入りの2作目などどれも面白そうだ。ぜひ観てみたいものだ。
というわけで、マカロニ苦手な方でも楽しめると思うので機会があったら是非是非であります(笑)。