日本も他人事でなくなった裁判員制度「十二人の怒れる男」 | 流浪の民の囁き

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映画を通した過去・現在・未来について、なぐり書き

裁判員制度がいよいよ動き出し、アメリカの陪審員制度より踏み込んだ

判断を果たして出来るのか、はたまたより熱心さでは負けていない日本

人が、関心を持った時、裁判自体もまた今まで特権的待遇にあった弁護士

は優劣が知れ渡り、腕が今以上に問われかねない・・・。

裁判所から選ばれた人々によって、罪状及び審判を合議によって判断する。

若干の違いはあるがそんな制度を、じっくり見せてくれるのがこの「十二人の

怒れる男」である。


流浪の民の囁き-十二人


http://jp.youtube.com/watch?v=gTDhgR3p12w

「十二人の怒れる男」 五十七年公開作


映画は、殺人罪で起訴された十八歳の少年の罪を決定する陪審員十二人の

討論場面のみの、演劇風な映画である。

裁判傍聴から審議に入る十二人の集められた人々、それらのキャラクターが

良く出ていて、何より罪に対して一般の人が、その審議をする。

そこには当然責任感が生じとなるが、出だしから十一人は有罪で、一人のみ

不確定要素があり、判断できず無罪というところから、議論は白熱していく・・・。



流浪の民の囁き-十二人の


五十七年の映画とはいえ、監督がシドニー・ルメットだけにそれぞれのキャラ

クターを際立たせ、それが犯行の詳細に踏み込んで行き、理路整然と無罪を

最初から行なっていた男の真摯な態度に、そして議論を深めて行くごとに、証

言や弁護士の証拠問いただしの不備とか疑惑が膨らんで行くと、一人一人と、

有罪から無罪へと変化をきたして行く。

ここらに「民主主義」の色濃く現れて、不承不承の人も段々と自分の主張を声

高に告げ始め、事件の背景が会話だけで理解出来て来る。

そして議論が白熱するごとに、陪審員に選ばれた人の隠されていた性格も皆に

知れ渡ってくると、何とも相互間のよそよそしさが時を追うごと、罪に対しての真

剣さ増してくる・・・。

そして最終的には、たった一人だった無罪評決が、一転全員一致での無罪へと

傾いて行く・・・。 この過程のやり取り中心だから、ともするとだれる・・・。

そう映画でもだれて判断が曖昧になった人に対して、今度は恐ろしく突っ込みまく

りで、最初よそよそしい全員が、罪の軽重と罪人に刑を下す責任感に目覚め、

判断の重要性と真正面から向き合う。

なかなか示唆に富む映画で、見終わった時には清涼感が得られた。

それは「全く知らぬ犯人」を全く他人が評決を下すのに他人事でない自分への置き

換えへと心情が変化し、犯罪と真実に一部屋で真摯に向き合うという人間らしさが

溢れてくるからだと思う・・・。



流浪の民の囁き-十二人の日本


上の作品から、これが日本なら、いや日本人ならどうやるだろうと

練ったのが三谷幸喜で、九十一年公開作である。

日本人がもし陪審員として罪を捌くとしたらの発想の演劇の映画化だけど、

こちらも日本人の特性とキャラクターを際立たせている関係で、一連の笑い

もあり、そしてほろりの場面もありと、上の作品を旨く取りまとめている。

で、下記の記事のように、弁護士が集会を開いたそう・・・。


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★「市民嫌がる裁判員制度は不要」集会で訴え

・前橋市内で25日、「裁判員制度」の実施に反対する弁護士らが企画した集会があった。
 全国70カ所以上で講演している東京弁護士会の高山俊吉弁護士が「知れば知るほど
 嫌われる制度で、必要とは言えない」と主張。約70人の参加者は閉会後、「ストップ!
 裁判員制度」と書かれた横断幕を掲げながら前橋地裁周辺をデモ行進した。
 講演で高山弁護士は「裁判員制度は米国の陪審制と似ていると思われがちだが、全く
 異なるものだ」とその違いを列挙した。(1)陪審制は無罪を主張した被告について、
 市民が罪の有無だけを検討する制度で、量刑判断は職業裁判官に委ねる
 (2)裁判員制度では、罪の認否に関係なく市民が量刑判断まで行う――などだ。
 続いて、陪審制は罪の有無の検討だけで何カ月も時間をかけるが、裁判員制度は
 3~5日間と短期間で量刑まで判断する点にも言及。「誤った制度の実施に反対
 することが、本当の意味での司法への市民参加だ」と訴えた。
 また、裁判員制度の対象事件が殺人など重大事件であることにも触れ、「残虐な話に
 市民が耐えられるか」と疑問を投げかけた。
 http://mytown.asahi.com/gunma/news.php?k_id=10000000901260002
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ここでも「市民が嫌う」というが、国民が嫌うではないのか。

この「市民」という言葉に、どうも胡散臭さがあって、そして報道しているのが「アサヒ」と

なると、どうにも裏がありそう・・・。

と、「十二人の怒れる男」の鑑賞後ともなると、国民一人一人が罪と向き合うのも、それは

それで責任というものに対する心構えが出来、そしてこれまで弁護活動とは違った見方が

出来れば、一歩ずつでも前進して、なんに対しても責任の重さが、国民を目覚めさせるか、

それとも弁護士が言うように嫌う制度となるか、議論ベタの日本人の変革に期待するが。 


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