今でいう偽装宣伝の走り「サランドラ」 | 流浪の民の囁き

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映画を通した過去・現在・未来について、なぐり書き

「全米三十八州で上映禁止、いま恐怖の頂点を極めて、戦慄の「ジョギリ・ショック」

がやってくる」というセンセショナルな宣伝文句を考え付くのも、それなりに広告宣伝

でこういったホラー系の映画には、より客を呼ぶのに使われるオーバーな言い回し

だが、しかしその関心の基が全く出ていないとなると、さて、これはもう誇大宣伝、い

や作品を偽装、ではなくて偽装宣伝で今なら大問題となる。

そんな配給会社のえげつない偽装・捏造の映画が、この「サランドラ」である。



流浪の民の囁き-サランドラ


http://jp.youtube.com/watch?v=JdYas_8EDZM

「サランドラ」 八十四年公開作


何しろ当時のチラシにも、記されている「ジョギリ」の内容

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アメリカ開拓時代に牧場の荒くれ男たちが使用した”牛刀”。体重数百キロの野牛の首も一撃で

漸り落すという鋭利な刃物だ。現在では、その高い危険性のため、ほとんど販売されていない。

この”牛刀”に、サランドラの悪魔の本能が働いて作り出されたのが【ジョギリ】だ!漸殺された野

牛を解体するための”骨ノコ”、”クリ抜きノミ”などをひとつにまとめた恐怖の殺人凶器。

全長1m20cm、全幅25cm、刃渡り1m、重量15kgの巨大な改造牛刀。獲物をメッタ漸りにし、ハラ

ワタが飛び出すほど深く突き刺し、バラバラに漸り刻む。サランドラが残虐の限りを尽くし、惨殺を

繰り返すにふさわしい、血に飢えた凶器だ!

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この説明チラシを見て、映画を見に行ったら「騙された」と、誰でも怒り狂う。

なぜにこんなものがとも思うが、今では「アルバトロス」という配給会社も同程度のことを平然と

やってのけるから、「便所の落書き」と思うしかないが、にしても改造牛刀による惨殺を思い浮かべ

テキサス・チェーンソーとかの殺戮場面が浮かびそうになる。

邦題にしてもどこからこんなものを引っ張り出したのか、いささか大蔵貢も真っ青・・・。

ストーリーは原爆実験跡地での銀鉱目当ての一家と、食人一家の争い・・・。

で、一行で説明終りの、トンデモ映画である。

もっとも食人という衝撃と映像は、登場人物の奇怪さ以外は驚きもないもので、ただこの登場人物

が、突然目の前に現れたらパニックを起こすだろう、異様さは特筆もの・・・。

ただ七十七年製作から、六年近くお蔵入りしていたものを世に出すのに、捏造・偽装を使ってしまっ

て煽り立てるのは、少々考えもの・・・、と、感想は「気持ち悪い」が面白い・・・。



流浪の民の囁き-サランドラ2


八十五年に製作された日本未公開の続編は、モロ「十三日の金曜日」テイストで、前作の

おどろおどろしさは影を薄め、殺戮の残酷さに比重が移り、どっかに転がっている物語に

なってしまい、気持ち悪いが、気色悪いに変化した折角のB級テイストさえ失い、見るには

相当な暇と穏やかな気分が必要とする・・・。



流浪の民の囁き-サランリメ


この映画をリメイクする人もいて、こちらは「騙された」思いが強く、未見である。

もっともホラーにおける見方としては殺戮の残虐さと、血祭りになる人間の哀れさと

ちらっとお色気を混ぜ合わせ、どんどん過激になっていけば、いや「気持ち悪く」ある

いは「気色悪く」描いていけば、それなりに見てくれる人はいるものだ。

ただやはり「偽造・捏造宣伝」はご法度だろう・・・。



流浪の民の囁き-サランりめ2


上の続編らしい・・・。って、最初の「騙し」が後々まで響く・・・。

「私は騙された」のトラウマは、そうそう消せないものである。

配給会社もこういった度量の少ない人も観客にいることを忘れるべからず・・・。

もっとも原題でなく、邦題を考えていかに「騙さず」観客を呼ぶかに知恵を使えば、

笑って「ああ、また騙された」と、アルバトロスみたいに呆れながら見ていることだろう。

サランドラ コレクターズ・エディション
¥4,441                      といったところで、またのお越しを・・・。