七十年代の世相をある意味象徴する「かもめのジョナサン」 | 流浪の民の囁き

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映画を通した過去・現在・未来について、なぐり書き

動物ものの映画というと、それも鳥がメインとなるとヒッチコックの「鳥」が思い出され

意味もなく攻撃的なイメージになってくるが、この「かめものジョナサン」は、一風変

わっていて、どこまでも「自由」という、当時の世相が色濃く滲み、擬人化した「かもめ」

の行動に、とても神秘主義を持ち込んで・・・。

一面、とても「アブナイ」薫りのする映画である。



かもめ


http://jp.youtube.com/watch?v=RGh8IpBg4wY&feature=related

「かもめのジョナサン」  七十四年公開作


原作のテイストに映像を絡め、またニール・ダイヤモンドの音楽と、ヒーリング・ミュージック映像の

はしりみたいな、癒しも含む優雅に大空を舞う「かもめ」映像は、人々が憧れた「空を飛ぶ」という

点からも見ていてほっとしたり、空への憧れを増長してくれる。

「この空を飛べたら」「雲になりたい」「翼を下さい」等、空を飛ぶという夢想を歌に託したものも多く、

その点においてこの映画は、作者の思惑を排除すれば、自然と戯れる動物映画とも取れる。

しかるに自分が「かもめ」であり、能力も無限でなくまた群れ飛ぶ習性は、口扶持を探すのに、たった

一人では困難を伴う種の本能・・・。ここらは擬人化して「独立独歩」を目指す当時の世相が色濃く

滲んでいて、反体制こそが「自由」というヒッピー的思考法のなせる業である。

そして原作者が空軍パイロットだったという下地も、それ程長距離を飛べるとは思えない「かもめ」に

能力以上を託したのは、現状打破こそが未来を切り開く糧であり、鬱積した思いの発露・・・。

と、とても思想的な側面を併せ持ち、かもめのジョナサンは壁を自ら突破し、それこそ自由に空を思い

通りに飛ぶことが出来るまでになる。

ここまでだったら、パイロットの夢の実現をかもめに託してという夢想の発露で、安心出来るのだが、

壁を突破し、瀕死の重傷で迎える長老かもめに影響されて・・・。

ここらからもう完全にかもめを使った宗教布教かと思える具合になってきて、後進の指導とばかりに

若いかもめに飛行法伝授となってくると、いささか自然への憧れとか、個人の行動がいつの間にか

「アブナイ」方向へと舵を向けて・・・。

特に飛行に失敗し断崖に激突し息を引き取るわかいかもめが、ジョナサンの触れる翼で生き返る

という奇跡へと進むと、完全に「キリストの復活」とかの、信じるものは救われる奇跡・・・。

まぁ、ファンタジィーとして捉えれば、その点でもはしりとなる映画かもしれない。

そういった点を省けば、映像は実際にかもめを飛ばし、それを撮っているだけであるから、映像は

癒されるものとなっている。そこにニール・ダイヤモンドの歌声が重なれば、癒し映画、見るポエム

と言える・・・。

だからこの映画、しっかり全編を見ることなく眠くなったら、寝てしまうという鑑賞法がベスト・・・。

物語は覚えていないが、とても気持ちよく寝れた・・・。

クラシック音楽のリスニング法にかなって、眠れる音楽はいい音楽というのがあるが、こういった

眠れる映画というのも、在りだと思う・・・。

遠い昔、音楽の授業でぐっすり眠った記憶が甦るものだ。

この原作も映画も、この七十年代を良く再現している。不安定な時には、癒される媒体で・・・。

もっともそういう時こそ、カルト宗教が台頭してくる時期でもあるが・・・。

救いをもとめる人々にとって、奇跡を起こすや癒される言葉はとても魅力的に心に響いてくるもの

だから・・・。

かもめのジョナサン
¥3,654                                    といったところで、またのお越しを