スペクタクル史劇における「ギリシャ神話」の中で悲劇のヒロインとして
有名なのは、トロイの木馬でおなじみのトロイの物語である。
その物語も、色々な解釈がありそれぞれに違った面白さを見せていた。
http://www.youtube.com/watch?v=T0oS6oTPyV4&NR=1
「トロイのヘレン」 五十五年公開作
ロバート・ワイズ監督のスペクタル史劇は、ヘレンの悲恋として
描いていて、スパルタの苛烈な攻勢にトロイは防戦一方だが
決死の覚悟で城を守り通す。
描き方による史実の人物、スパルタやアキレスがどこか極悪人
として、滅ぼされるトロイの王子は、愛に生涯を賭けたと何ともな
人物として、ここらに人を描く時、流石ミュージカル映画で名を成す
監督の物語の中心は、愛による悲恋物語の演出・・・。
それだけに迫力のある場面展開も、その後の束の間の宴もどこか
ぴんとこない。
第一、王子が王妃に恋をするところまでは、ある程度分かるが連れ
帰るという発想が、今一・・・。
「その美貌が災いを招いた」と暢気なことで戦争に突入って、そこまで
の美貌って、何だ!、以後、刺身のつま的「黄金の七人」で悪女をしてい
るロッサナ・ポデスタが、ヘレンを演じているのだが、美貌は分かっても
果たして国を賭ける存在か?、と、スパルタの狙いとトロイの経済性を
無視して「滅びる国」を悲恋の地と描くと、どこか空虚な絵空事になって
しまう。
運命に翻弄される男女として、国の躓きのきっかけってなところで、落ち
着かせると、悲劇は国の思惑で生み出されるって、ところに落ち着いた
のに・・・。ただ、木馬はいいし、こういう娯楽作品は内容を吟味すること
なく、映像を流すととても楽しい・・・。
いにしえの出来事は、血なまぐさくともリアリティのない分、楽しめる。
http://www.youtube.com/watch?v=o4oVL5wwnl8
「トロイ」 〇四年公開作
監督は「Uボート」のウォルフガング・ペーターゼンだけあって、トロイ側から描く
のでなく、主人公は現在もその故事に倣って名を残す「アキレス」そのアキレス
をいつの間にムキムキになったのかプラット・ピットが演じている。
監督が監督だけに、ここではヘレンはどこの馬の骨的扱いで、悲恋の相手の王子
に至っては、ただのへたれの女たらしである。
解釈が違えば、印象も違ってくるものだ。
流石に男くささを映像にちりばめる監督だけあって、アキレスやユリシーズも男、で、
対するへたれは放っておいて、その兄や国王のピーター・オトゥールはなかなかに
見せてくれる。
スパルタもその名を今に残すが、激烈で領土的野心という視点に立てば、力でねじ
伏せるのは、古来からの慣例であり、それに正義はない・・・。
と、ややアキレスに肩入れした描き方だが、二本を比べれば、こちらの方がそういった
公平性は優れていると見える。
にしても、ギリシャ神話ってのは、戦いの原点的面白さがあり、肉体のぶつかりあいは
人間本来の闘争心の発露ってな、去勢されない男はいい・・・。