カンフという言葉も、この映画がなければとても日本で認知される
ことはなかったし、「ヌンチャク」なんてものも、ヒット商品として
売られることもなかった。
まして「香港」なんてところの映画が、一大ビームを巻き起こす
こともなかった。
それがこの映画「燃えよ、ドラゴン」が上映されるや、一気にこの種の
映画が、配給会社によってどんどんスクリーンを飾った・・・。
http://www.youtube.com/watch?v=QQORnYPqU3A&feature=related
七十三年公開作
主演のブルース・リーを日本で一躍スターダムに押し上げた映画だが、
リアル・タイムで見た時は、若かったのもあって即座に影響を受けたものだ。
何しろ見終わった帰り道、あれは有楽町の駅だったと思うが、プラット
・ホームの端で、「アチョ・・・」とやり合う若者が、それを見て自分達もまるで
ブルース・リーにでもなった気で、同じように叫んでいた。
勿論、他に乗客がいなかった訳でなく、そんなのが気にならなかった程、興
奮していた。
と、恥かしい程にこの映画は、戦う男という悲壮感と男気を見せ付ける映画だった。
何よりブルースの相手を倒した時の「悲しい表情」には、ぐっと来るものがあった。
勝っても喜ぶこともなく淡々とした表情、そして巨悪に対する憎悪の表情と科白より
その表情と格闘技の技で演じているのには、映画の醍醐味はこんなところにもある
んだと新しい発見であった。
というか、これとマカロニ・ウェスタンの主人公は、なんとなく共通した趣きがある。
ニヒルという極端に言葉がなく、そのくせ表情とか目の動きで演技している。
そしてそれがとても映画にとっての緊迫感を生み出している。
加えて空手よりも躍動感があるカンフには、そのスピードにも魅せられた。
その上、音楽がぴたりとはまる完成された娯楽作品であった。
これを見た時は、何しろロードショーなのに立ち見である。
それも一度満杯で、上映を一度やり過ごしてからの入場にも関わらず、立ってでも
見たかったのだから、その熱気の凄さは今では「夢幻」な感じである。
もっとも柔よく剛を制すではないが、身体の小さい者が大きい者を倒すのは分かるの
だが、白人や黒人よりもましてや東洋人の中では、一番強いんだの歪んだ側面も垣間
見せるところは、気色ばむ点もない訳ではない。
ここらは中国人の思い上がりも、と、映画ではヒーローとして描かれているのを、貶しても
詮無いことだが、少々気には掛かる点もある。
それでも痛快な武道な映画で、ブルース・リーの極度の節制で得られる肉体の躍動美は
小さな鋼で、その踊るような戦いぶりは、胸がすっとする爽快さが溢れていた。
てなところで、またのお越しを・・・。