戦争中の奇妙な友情「戦場に架ける橋」 | 流浪の民の囁き

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映画を通した過去・現在・未来について、なぐり書き

静かな反戦映画として「戦争に架ける橋」は位置付けられるだろう。

捕虜収容所での囚われた側とそれを警護する側の立ち位置と精神

の逆転、そして囚人を橋建設に向かわせる上官の戦争への意識と

規律を重んじる余りの敵への協力は、敵味方に奇妙な友情を生ん

で行く。囚われているのはイギリス兵とアメリカ兵、捉えている側は

日本軍である。ここには厳格な戦争における優劣が基準でなく、建

設に向けたイギリスの上官と日本軍指揮者の奇妙なジェラシーや

友情が芽生え、そして最後のシーンへと突き進んでいく・・・。


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http://www.youtube.com/watch?v=iiM5NUOKcSg&mode=related&search =

映画のオープニングで、統率の取れた捕虜になったイギリス軍の行進

に厳格そうな指揮官を登場させ、そして傷ついてだらけれているアメリカ兵

というコントラストで、戦争における立ち位置が、監督の頭にある思惑で描

かれていく。ちなみにこの監督もイギリス人のデビット・リーンである。

にしても口笛による行進曲という斬新さは、五十年前の映画としてはかなり

冒険であったろうが、このシーンの整然とした行進とぼろきれの服装が、精

神の気高さを際立たせている。

だけに観客はこの導入部だけで、映画に吸い込まれていく。


http://www.youtube.com/watch?v=45CzmLAl7NA&mode=related&search =

このワン・シーンにイギリス上官を演じたアレックス・ギネスの鬼気迫る演技

力が敗れ囚われていようが、精神の気高さはなくすまいとするイギリス人を

見事に演じている。それに対峙する日本人指揮官役の早川雪舟の男のやり

とりと、それに敗れてしまう雪舟の人間的な悔しがりようが戦争中を描いてい

る割には、人間対人間の葛藤の見事なドラマになっている。

しかし気高さが徐々に狂気へと向い始め、橋建設でどんどん狂気は囚われ

ている身をも忘れ、橋建設が収容所の規律を守る手段へと変質していく。

ここに敵味方の区別はアメリカ人を除いて、解消されているようになって、

建設の二文字が目標で、捕虜の意識は、戦争意識はどこかへ・・・。

ここでその狂気に気づくのが、やはり飄々としたアメリカ人で、橋の破壊活動

に脱走をし、味方を引きつれ戻ってくる。

おりしも橋は完成し、その祝賀が執り行われ、狂気の中での友情まで育まれ

る。がこの鉄道橋の完成は日本にとっての命綱、だけに日本人指揮官は、完

成を見届け、しかし自らの指導力のなさを自覚し、自害して果てる。

で連合軍にとっては劣勢に追い込まれる危険が孕む。で破壊活動が着々と進む。

やがて完成の報を受けた日本軍は、兵と武器を満載した列車を走らせる。

完成した橋の出来栄えに満足そうに微笑むイギリス指揮官は、川辺から橋を

眺め、ふとしたことで水かさの引いた川岸に不審な線を発見してしまう。

同時に工作したアメリカ兵も日本兵の歩哨に発見され、銃撃戦が・・・。

列車は橋に近づいてくる。イギリス指揮官は線をたどる。

それを見たアメリカ兵は、叫びながら一発の銃弾を指揮官めがけて浴びせ、

折から橋の袂まで来ていた列車は、指揮官の倒れこむ先にあった起爆装置

のスイッチが指揮官の倒れこみで押されて、橋脚が爆発して吹き飛び橋が

川へと崩れてきてしまった。続けて列車も・・・。

結局狂気の上に完成した橋は、敵味方の戦争を遂行したアメリカ兵によって

崩れ去り、指揮官は最後に狂気を終了させるように自らスイッチを・・・。

そして跡形なく崩れ去った空に、白い鳩が飛び去っていく・・・。

これほど静かに、そして激しく反戦を描く映画も珍しい、何しろイギリス人の気質

そして日本人の気質も丁寧に描き、それでいて戦争の狂気は、厳格・規律に関

係なく違った方向に向ったとしても、誰も止められず何かが失われて、初めて終

わりを告げる。この所、国内で捏造してでも旧日本軍の戦争犯罪をこれでもかと

紙面に、映像に載せる人々がいるが、「人生、五十年」と詠った信長の人生より

長い六十年前を、何としても掘り起こし、日本人の精神構造を壊したい気持ちは

どこから来るのだろう。早川雪舟演じた指揮官の潔さは、この批判ばかりの人々

にとって、妄想の賜物なのだろう。そして「硫黄島の手紙」に描かれる栗林中将等

いまいましい存在でもあるかのように、無視を決め込む。嘆かわしい日本人もいる

ものだ。それが教える教育は、この映画からはとてもくみ取ることの出来ない、歪

曲された歴史観から来るのだろうなぁ・・・。


     ではでは、愚痴で仕舞いにするのも締りが悪いが書き疲れです。

                                      またのお越しを・・・