明治二十六年発行の『新撰小學讀本巻五』を紹介します。なお、読み易くするため、地の文は平仮名に統一し、文字化けを防ぐため、漢字は所々新字体に改めます。
第十八課 ランプの話。
或夜、數多の人集りし時、座敷の眞中に、大なるランプをともせり。或人、此ランプは、實に、珍しく明るきものなりと賞めたり。ランプは之を聞き、自まんの心を出し、「日や月のひかりにても、私には及ばぬならん、」と云へり。其時庭の方より、さと風吹き來りければ、ランプの火は忽ち消えたり。故に其人マツチを出して、ランプに火を付けながら、「あまり自まんをすること勿れ、」と云ひて、恥をかゝせたりとぞ。
凡て、自まんをすれば、直に恥をかくものなるが故、人々つゝしむべきことなり。
【私なりの現代語訳】
ある夜、多くの人が集まった時、座敷の真ん中に、大きなランプが灯っていました。ある人が、このランプは、実に、珍しく明るいものであると褒めました。ランプはそれを聞き、自慢の心を出し、「太陽や月の光も、私には及ばないだろう」と言いました。その時庭の方から、さっと風が吹いて来たら、ランプの火はすぐに消えました。そのためその人はマッチを出して、ランプに火を付けながら、「あまり自慢をしてはいけません」と言って、恥をかかせたということです。
おおよそ、自慢をすれば、すぐに恥をかくものであるため、人々は謙虚でなければならないのです。
【私の一言】
謙虚さは日本人の美徳であると、よく言われてきました。ところがテレビや書籍で流行りの「日本スゴイ!」論は、謙虚さの対極にある自慢の心が発露したものです。「日本スゴイ!」論を振りかざす自称愛国者が、実は日本人の美徳に反しているのは、滑稽な矛盾ですね。
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