【映画評】ダーティハリー3 | じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

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このブログは、田舎で暮らすおっさんの独り言を日々書き綴っています。ブログタイトルの「じゃんご」とは秋田弁で「田舎」のことで、偶然にもマカロニウエスタンの主人公の名前でもあります。何となく付けてみました。お時間があれば、広い心で御覧になってください。

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事件処理の方法が乱暴という理由で、人事課に配属されたサンフランシスコ市警察のハリー・キャラハン。そんな時、過激派グループが陸軍の兵器庫から武器を強奪したという事件が起こる。1976年日本公開作品。監督はジェームズ・ファーゴで、出演はクリント・イーストウッド、ハリー・ガーディノ、ブラッドフォード・ディルマン、タイン・デイリー。
 
クリント・イーストウッド主演の人気シリーズ第3作です。シリーズ化によってスケールアップし、終盤でハリー(イーストウッド)はアルカトラズ島でバズーカ砲をぶっ放します。このロケが後の『アルカトラズ島からの脱出』に繋がったのでしょう。
 
ハリーは言動も行動も乱暴な荒くれ者ですが、悪人ではありません。第1作『ダーティハリー』の相棒はラテン系のチコ(レニ・サント―ニ)、第2作『ダーティハリー2』の相棒は黒人のスミス(フェルトン・ペリー)ですが、マイノリティである彼らを差別することはなかったからです。本作の相棒は女性のムーア(タイン・デイリー)であり、組んだ当初は侮っていても、能力や意欲を認めれば、対等の扱いをします。
 
イーストウッドが演じる役は、他の作品においても同様の態度を見せます。『許されざる者』の相棒は黒人のネッド(モーガン・フリーマン)であり、『グラン・トリノ』ではアジア系少数民族のモン族と心を通わせます。これらの態度は、イーストウッドがマカロニウエスタンである『荒野の用心棒』の撮影現場を経験したからでしょう。周囲がイタリア人だらけの現場で、人種や民族ではなく、人間の中身で判断するのが正しいと学んだイーストウッドは、それを自分が演じる役に反映させていったのだと思われます。
 
そのようなハリーに対し、市長(ジョン・クロフォード)に媚びる役人根性丸出しのマッケイ課長(ブラッドフォード・ディルマン)は、真犯人とは別の黒人過激派グループを犯人と決めつけ、誤認逮捕してしまいます。マッケイは偏見に囚われた黒人差別主義者です。本作はマッケイを愚者として描いており、そこにもイーストウッドの哲学が反映されています。
 
しかし、ハリーが女性警官の登用を推進するリベラルな市長を軽蔑したり、真犯人の過激派グループ「人民解放攻撃隊」を思想なき金目当ての暴徒として描いたりするのは、左翼に対する差別や偏見を助長するのではないでしょうか。娯楽作品なので、悪役を分かり易くするためであっても、本作の少々残念なところです(共和党支持者であるイーストウッドの政治的信条を取り入れたのかもしれませんが)。
 
こうして考えると、本作の裏テーマが差別や偏見であるかのようでもあります。差別や偏見が蔓延る社会では、それらを払拭して人間を見ようとするハリーが、はみ出し者扱いされる孤独な存在となるのは已むを得ないのです。
 
★★★☆☆(2019年4月25日(木)DVD鑑賞)
 
高倉健が生きていたら、イーストウッドと同じくらいの年齢です。楽天市場

 

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