明治二十六年発行の『新撰小學讀本巻五』を紹介します。なお、読み易くするため、地の文は平仮名に統一し、文字化けを防ぐため、漢字は所々新字体に改めます。
第九課 鼠の孝行。 一
或時一さうの商船、多くの米をつみ込み、みなとを出帆したり。船中何時となく、鼠の數をまして、米を食ひ、且器物を損する等、一方ならざるがいをなせり。
船子等は、之を見て大に怒り、鼠をみなごろしにせんと思ひ、みなとに着くを、今やおそしとまち居たり。やがて船は、みなとに着きしかば、船子等は、直ちに、其荷物を陸に上げたる後、船底に硫黄をもやしたり。鼠は、其けぶりにむせびて、皆甲板の上に逃げ出でたり。

【私なりの現代語訳】
ある時一艘の商船が、多くの米を積み込み、港を出帆しました。船中に何時の間にか、鼠の数が増えて、米を食べ、かつ器物を損壊するなど、普通ではない損害を与えました。
水夫たちは、これを見て大いに怒り、鼠を皆殺しにしようと思い、港に着くのを、今か今かと待っていました。やがて船が、港に着くと、水夫たちは、直ちに、その荷物を陸に上げた後、船底で硫黄を燃やしました。鼠は、その煙に息苦しくなって、皆甲板の上に逃げ出しました。
【私の一言】
これは二部作の前編です。「鼠の孝行」とは何か気になった人は、鼠だけに夢チューになっている証しです。後編は、しばらくお待ちください。
にほんブログ村に参加しています(よろしければクリックを!)