【映画評】戦艦バウンティ号の叛乱 | じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

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1787年、実際にイギリスの軍艦バウンティ号で起こった反乱事件を基にした映画。1938年日本公開作品。監督はフランク・ロイドで、出演はチャールズ・ロートン、クラーク・ゲーブル、エディ・クイラン、フランチョット・トーン、ハーバート・マンディン。
 
1938年の日本公開時の邦題は『南海征服』です。当時の大日本帝国において「叛乱」という言葉がふさわしくないから、この邦題になったそうです。当時の軍部は「征服」という言葉の方が国威発揚のためになると考えたのでしょう。しかも検閲で大幅にカットして公開を許したそうです。
 
バカバカしい話ですね。本作は船乗りが反乱を起こす内容で、『戦艦ポチョムキン』や『蟹工船』など、いわゆる「アカの映画」と同じようなものです(当時まだ小説『蟹工船』は映画化されていませんが)。そのような作品でも、軍部は邦題をイジって、フィルムを切り刻めば、国民を騙せると思っていたのでしょう。そんな頭の悪さだから戦争負けるんだよ、バカ。
 
さて、作品の内容に言及しましょう。戦艦バウンティ号はイギリスからタヒチに向かい、奴隷用食料のパンの木を得てから、それをジャマイカへ届けるという大航海に出ます。それ故、ほとんどのシーンがバウンティ号の船上または船内になります。当時は特撮技術が今ほど進歩していない時代です。大掛かりなセットを組んで、役者が体を張って演じているので、生の迫力が伝わります。
 
そのバウンティ号の船長ブライ(チャールズ・ロートン)は、無能の分際で私利私欲に走り、厳罰による恐怖で乗組員たちを支配しようとします。これは現代のブラック企業経営者の姿と同じです。ブラック企業経営者は自身の無能を棚に上げ、従業員をパワハラで酷使することによって利益を上げようとしますから。そのようなブラック企業を潰して、無能な経営者を野垂れ死にさせるのが正しい社会のあり方です。
 
それを行動に移したのが、クリスチャン(クラーク・ゲーブル)をリーダーとする乗組員たちです。彼らはブライの理不尽な仕打ちに堪忍袋の緒が切れ、反乱を起こしました。実際の事件の後、イギリス海軍の士官と船員の労働関係が改善されたのは事実です。乗組員たち労働者が反抗し、労働環境を改善させたのですから、本作は「アカの映画」ということになります。
 
アカでも何でも社会のあり方を正しくし、そこで生きる人間を救済することに何の問題があるのでしょう。アカだ何だと拘る者は、本作に小細工して国民を騙そうとした戦前の軍部と同じレベルのバカです。
 
一度は追放されながらも反撃に出たブライから逃れるため、クリスチャン一行はタヒチから遠く離れた無人島に辿り着きます。この行動は敗残ではなく、理想郷を築くための積極的逃避です。タヒチの生活に魅了されたことを反乱の動機としたクリスチャンは、その無人島にタヒチのように自由で平和な社会を作るでしょう。そこでは、ブライのように威張り散らす無能が人の上に立つことなどあり得ないのです。
 
★★★★☆(2019年3月5日(火)DVDで鑑賞)
 
髭の無いクラーク・ゲーブルはイメージが違いますね。
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