
東京で知り合った男・松永のことが忘れられず、ロシアのウラジオストクまでやってきた高山秋子。しかし、再会を果たした松永は秋子のことを覚えておらず、「外国では人を信じるな」とだけ言い残して姿を消す。松永の後を追おうとした秋子はマフィアに襲われ、荷物も所持金も全てを奪われてしまう。荒野に捨てられた秋子は何とかして街に戻り、日本人の斉藤が経営するレストランに職住を得て、再び松永を探し始める。そんなある日、店の前を松永が通り過ぎ、秋子はその後を追いかけるが……(映画.comより引用)。2014年公開作品。監督は黒沢清で、出演は前田敦子、鈴木亮平、アイシー、山本浩司。
前田敦子のミュージックビデオ企画から派生した映画です。ラスト近くに題名と同名曲が流れる構成で、そこまでの約60分がドラマになっています。
AKB48を卒業した前田が主演なので、企画は秋元康です。秋元は自分が企画した『着信アリ』を三池崇史に、『伝染歌』を原田眞人に監督させました。本作は黒沢清が監督しており、作家性が強い監督にすることによって、映画好きの関心を引こうとする魂胆が透けて見えます。はっきり言って、あざといです。
企画先行の作品でも、黒沢監督は自己流のスタイルを変えません。派手な色彩を抑えた背景で、過剰な感情表現をしない演者をロングショット多用で撮る、乾いた演出は画面に不穏な空気を漂わせます。荒野や廃墟があるウラジオストクというロケ地は、その黒沢演出に合っています。前田はアイドル時代から陰のあるイメージなので、作品の雰囲気を壊していません。
物語は終盤で突然の変化を見せます。それまでの約50分を放り投げるような変化です。そしてラストシーンは『気狂いピエロ』や『イージー・ライダー』を思い出させる幕引きです。脚本も兼ねた黒沢監督は、ありきたりな「アイドル映画」を撮るつもりはなかったのでしょう(しかし、それは秋元の思う壺なのかもしれません)。
★★★☆☆(2018年11月28日(水)DVD鑑賞)
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