
「あしながおじさん」をモチーフに、実の父親を探しに旅に出たミュージカルスターを夢みる少女の姿を描く(映画.comより引用)。1984年公開作品。監督は角川春樹で、出演は原田知世、倍賞美津子、室田日出男、加賀まりこ、渡瀬恒彦。
赤川次郎の原作小説を映画化した作品ですが、登場人物の名前と「あしながおじさん」探しの要素以外は、別物に改変されています。今だったら「原作レイプ」と騒がれて当然の暴挙ですが、出版元の社長だった角川春樹が監督だから許されたということでしょう。社長の地位を利用したとなれば、それはパワハラ認定されるべきものですけどね。
劇中にミュージカルシーンや仲道美帆(原田知世)のダンスシーンが入っており、これらが全部ストーリーの流れを悪くする邪魔物になっています。また、オープニングとエンディングにミュージカルシーンがあり、外国人がキャスティングされた前者の主役を、後者で仲道が務めるという形で、彼女のミュージカルスターになる夢が叶ったというハッピーエンドを表しています。しかし、それならばミュージカルの主役を務めることが、どれほど大変かを説明する描写が必要です。例えばミュージカルの主役を演じた女優がVIP待遇を受けているとか、その主役をめぐってドロドロした争いが起きているとかです。そうした描写がないので、仲道が主役の座を得ても、達成感を共有できません。
角川は本作が監督二作目ですが、どうにも映画監督としてのセンスの無さが伝わってきます。無暗に引きのカットを使ったかと思えば、意味不明な寄りのカットを使い、それらのカットを繋ぐバランスが悪いのです。角川監督の自己満足なのでしょう。プロデューサーも兼任しているので、周囲のスタッフは誰も進言できないという、これまたパワハラ認定されるべきものですけどね。
本作は『時をかける少女』に続く、原田の第二回主演作です。前作『時をかける少女』で大林宣彦監督が引き出した原田の魅力を、角川監督は本作で全て消しています。それはそれで凄いのですが、褒めるべきことではありません。
その本作のために、一生懸命ダンスの練習をしたであろう原田にプロ意識の高さを感じます。鑑賞中に荒んでいった私の心を癒したのは、原田が澄んだ美声で歌う劇中歌でした。原田が出ていなければ、本作を観るのは苦痛です。
近頃は80年代のバブル期を懐かしみ、良い時代だったとする風潮があります。しかし、本作が全国劇場公開された当時は、それだけで狂った異常な時代だったと断言できるのです。
★☆☆☆☆(2018年9月27日(木)DVD鑑賞)
『REX 恐竜物語』にまで出演した渡瀬恒彦の角川春樹に対する義理堅さ