
何不自由なく暮らす主婦アリスが、奇妙な薬をきっかけに様々な冒険に出遭う、現代の不思議の国のアリス(映画.comより引用)。1991年日本公開作品。監督はウディ・アレンで、出演はミア・ファロー、ウィリアム・ハート、ケイ・ルーク、ブライス・ダナー、ジュディ・デイヴィス、アレック・ボールドウィン、シビル・シェパード。
アリスと言っても、谷村新司と堀内孝雄と矢沢透のグループではなく、『不思議の国のアリス』のことです。同作の主人公は少女ですが、本作の主人公は主婦です。ウディ・アレン監督らしく、大人のファンタジーになっています。
主人公アリスを演じるのは、当時アレン監督の私生活上のパートナーであったミア・ファローです。ファローの代表作は『ローズマリーの赤ちゃん』で、同作の監督はロマン・ポランスキーです。ポランスキーの二人目の妻は女優のシャロン・テートで、彼女はチャールズ・マンソン率いるカルト集団に襲われ、惨殺されるという悲劇に遭っています。何故この話をしているかと言えば、アリスのフルネームがアリス・テートなので、深い意味があるのだろうかと思ったからです。
チャイナタウンの中国人医師ヤン(ケイ・ルーク)から処方された薬のせいで、アリスは元彼エド(アレック・ボールドウィン)の亡霊が見えるようになったり、透明人間になって夫ダグ(ウィリアム・ハート)の浮気現場を目撃したりと、アンビリーバボーな不思議体験をします。それがアリスの人生に大きな影響を与えることになるのです。
ところでヤンは、悩むアリスに「思考することで悩みが生まれる(だから思考するの止めろ)」と説きます。これはブルース・リーの「考えるな、感じろ」と同趣旨で、アレンがイメージする東洋思想です。西洋思想はデカルトの「我思う、故に我あり」やパスカルの「人間は考える葦である」という言葉があるように、思考を重視する傾向があるので、そのカウンターとして思考より感覚を重視するのが東洋思想だと解釈しているのでしょう。
そうした解釈の東洋思想はアレン独自のものではなく、1960年代のアメリカでも多くの若者に共有され、薬物(麻薬やLSD)使用による精神解放を訴えて広がったヒッピー・ムーヴメントを生み出します。そのヒッピー・ムーヴメントの下で生まれたのがマンソン率いるカルト集団で……あれ、やはりアリス・テートという名前には深い意味があるのでしょうか?
★★☆☆☆(2018年5月4日(金)DVD鑑賞)
アレンとポランスキーには「ロリコンのユダヤ人」という共通点も。