明治二十年発行の『普通讀本四編上』を紹介します。なお、読み易くするため、地の文は平仮名に統一し、文字化けを防ぐため、漢字は所々新字体に改めます。
第十六課 鯛、板魚、堅魚。
海に産して人の食用に供すべき魚類は、頗る多しと雖も、其味の美なるは、鯛、板魚、堅魚を最とす。鯛は身の長さ一二尺、其色淡紅白色なれども、死すれば赤色に變ず。其味頗る美にして、盛餐祝宴等に多く之を用ふ。板魚は形扁くして、甚だ鰈に似たれども、鰈は右片黒くして左片白く、板魚は之に反す。四時共にあれども、春夏の際、味尤も美なり。堅魚は圓く肥えたる魚にして、群をなして東南海に來る、其肉を蒸し乾して堅魚節を作る、土佐、薩摩等の名産なり。

【私なりの現代語訳】
海で獲れて人の食用になる魚類は、とても多いと言っても、美味しいのは、鯛、板魚(平目)、堅魚(鰹)がトップクラスです。鯛は体長約30~60センチメートルで、体色は淡い紅白色ですが、死ねば赤色に変わります。とても美味しく、パーティーや祝いの宴会等に多く用いられます。板魚は体形が平べったく、かなり鰈に似ていますが、鰈は右半分が黒色で左半分が白色で、板魚はその反対です。四季を通じて獲れますが、春と夏に最も美味しくなります。堅魚は丸々と肥えた魚で、群れをなして東南海(静岡県から和歌山県までの海域)まで来ており、その肉を蒸して乾燥させ、堅魚節(鰹節)を作り、土佐(高知県)、薩摩(鹿児島県)の名産品になっています。
【私の一言】
海水魚について述べています。当時は鰹が鮪より格上だったのでしょう。こうやって魚の名前が列挙されると、シブがき隊の「スシ食いねェ!」を思い出しますね。
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