
アフリカ医療に生涯を捧げたシュバイツァーの自伝に感銘を受け医師を志した航一郎は、大学病院からケニアの研究施設に派遣される。日本に恋人を残しながらも、ケニアの地で充実した日々を送っていた航一郎は、現地の赤十字病院から1カ月の派遣要請を受ける。そこで彼が目にしたのは、重傷を負って次々と運ばれてくる少年が、みな麻薬を注射され戦場に立たされた少年兵であるという事実だった。そんな中、病院に少年兵・ンドゥングが担ぎ込まれた。目の前で両親を惨殺され、麻薬でかき消されたという深刻な心の傷を抱えたンドゥングに、航一郎は真正面から向かっていくが……(映画.comより引用)。2015年公開作品。監督は三池崇史で、出演は大沢たかお、石原さとみ、萩原聖人、鈴木亮平、藤谷文子、中村久美、山崎一、石橋蓮司、真木よう子。
さだまさしの同名曲に感銘を受けた大沢たかおが、『解夏』や『眉山』に出演したことで縁のある、さだ本人に小説化を猛プッシュし、更に映画化まで企画し、『藁の楯』で組んだ三池崇史を監督に選んだのが本作です。大沢は世間のイメージと違って、松岡修造並みに熱い男ですね。
劇場公開時に、さだまさし原作のヒューマンドラマと聞いて観た人は、エンディングロールの最後に「監督 三池崇史」の文字を見て、椅子から滑り落ちるほど驚いたでしょう。そんな映画を撮る人間ではありませんから。
三池監督は、いつもの悪ふざけを封印して、真面目に撮っています。それでも三池監督らしく冒険しているのは、ケニアで現地撮影している点です。同じアフリカ大陸でも、南アフリカ共和国のように政情が安定している場所ではなく、まだ危なっかしいケニアで撮影するのは何かとリスクが高いからです。
またケニアと長崎で、明らかに素人と思われる現地人を配役している点も冒険です。長崎のパートは役者の台詞回しが上手くないので、分かり易いです。これら現地撮影と現地人起用により、三池監督は小手先の演出を超えたリアリティーを求めたのでしょう。
しかし、悪ふざけを封印した三池作品は、平凡な映画になってしまうことが露呈してしまっています。その上、内容にメリハリが乏しいのに、139分という上映時間は長過ぎると言わざるを得ません。何やら色々な情熱や苦労が報われていない映画です。
★★☆☆☆(2018年3月14日(水)DVD鑑賞)
本来の三池崇史監督作品を知るとショックかも。