明治二十年発行の『普通讀本四編上』を紹介します。なお、読み易くするため、地の文は平仮名に統一し、文字化けを防ぐため、漢字は所々新字体に改めます。
第十一課 寒暖計。
夏は暑く冬は寒し、春は暖にして秋は冷なり。此四時の間、温度の變化を測る器を寒暖計と云ふ。寒暖計は、細き玻璃管の中に水銀を盛り、外に度目を劃みたるものなり。凡そ物は熱に遭へば膨脹し、冷ゆれば収縮す。管中の水銀も此理に背かず、四季の氣候につれて脹縮し、脹すれば昇り、縮すれば降り、以て寒暖の度を示すなり。寒暖計には三種の別あれども、我が國にて通常用ふるものは、華氏の制にして、茲に圖せるもの卽ち是なり。此寒暖計にては、三十二度に降れば、水凍り、二百十二度に昇れば、沸騰して蒸氣となるものと定めたり。

【私なりの現代語訳】
夏は暑く冬は寒く、春は暖かく秋は涼しいです。この四つの時季の間、温度の変化を測る器械を寒暖計と言います。寒暖計は、細いガラス管の中に水銀を入れ、外面に目盛りを刻んだものです。おおよそ物質は熱すれば膨張し、冷やせば収縮します。管の中の水銀もこの道理に反せず、四季の気候に応じて膨張収縮し、膨張すれば上昇し、収縮すれば下降し、それで寒暖の度を示します。寒暖計には三種類ありますが、我が国で通常用いるものは、華氏の定義によるもので、ここに図示したのはそれです。この寒暖計では、三十二度に下降すれば水が凍り、二百十二度に上昇すれば、沸騰して蒸気となるものと定めています。
【私の一言】
今となっては寒暖計も体温計もデジタル表示なので、温度計の目盛りの読み方は「失われつつある古(いにしえ)の技」になっています。
にほんブログ村に参加しています(よろしければクリックを!)