明治二十年発行の『普通讀本四編上』を紹介します。なお、読み易くするため、地の文は平仮名に統一し、文字化けを防ぐため、漢字は所々新字体に改めます。
第七課 運動の方。
運動をなすにも種々の方あり、或は散歩し、或は疾走し、又は馬に乗り、水を泳ぎ、紙鳶を揚げ、羽子を打ち、獨樂を廻し、輪を轉ばす等、一様ならず。然れども運動の危險なるものは、適度に斟酌し、安全にして愉快なるを擇ぶべし。爰に圖せるは、鬼事の状なり。兒童十六人、手を連子て、圓形に立てり。鬼は一人列より外づれて、圓形の周圍を疾走し、手を以て先づ列中一人の背を撃つ。撃たれたる一人は、直ちに列を脱し、鬼に背きて走り、早く圓列を一周して、空位に入らんことを競ふなり。其孰れが勝んか、孰れが負んか、未だ知るべからず。負けたるものは、復た鬼となり、列の周圍を疾走し、列中一人の背を撃ち、以て列を去らしめ、再び空位を競ふこと、初めの如くするなり。

【私なりの現代語訳】
運動をするにもいろんな方法があって、散歩したり、駆けっこしたり、馬に乗ったり、水泳したり、凧を揚げたり、羽根つきしたり、コマを回したり、輪っかを転ばしたりと一様ではありません。それでも運動の危険なものは適度に手加減して、安全で楽しいものを選びましょう。ここに図示したのは、鬼ごっこの様子です。児童16人が手を繋いで円の形に立っています。鬼は一人だけ列から外れて、円の周りを走り、手で先ず列の中の一人の背中を叩きます。叩かれた一人は、すぐに列を離れ、鬼の反対方向に走り、早く円を一周して、空いた位置に入ることを競います。どちらが勝つか、どちらが負けるかは、まだ分かりません。負けてしまった者は、また鬼となって、列の周りを走り、列の中の一人の背を叩き、それで列から離れさせ、再び空いた場所を競うことは、初めのようにします。
【私の一言】
鬼ごっこのルールについて、詳細に示しています。今年は「明治維新150年」だと政府がワーワー騒いでいるようなので、明治時代から伝わる、この遊びも復活させたらいいんじゃないですかねえ(投げやり)。
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