BSジャパンで放送していた『孤独のグルメSeason5』を観終えました。テレビ東京での本放送は、昨年(2015年)10~12月までの1クールでしたが、秋田県ではリアルタイムで観ることができません。今年(2016年)1~3月までの1クール遅れで観ることになりました。
本放送の『孤独のグルメ』は、Season4まで水曜深夜に放送されていました。ところがSeason5は金曜深夜0時12分からでした。何と裏の長寿深夜番組『タモリ倶楽部』と放送時間が被っていたのです(『タモリ倶楽部』は0時20分から)。主人公・井之頭五郎が毎回違う町を訪れる、流浪のグルメドラマが「毎度お馴染み流浪の番組」に対抗したという面白い出来事です。原作者・久住昌之が、かつて『タモリ倶楽部』にレギュラー出演していた事実を踏まえると、実に興味深くもあります。
それを番組制作側は意識したのでしょう。『孤独のグルメ』タイトルバック曲は、久住の作曲によるものです。西部劇調の「荒野のグルメ」(Season1-2)、ロシア民謡調の「孤独のツンドラ」(Season3)、中華音楽調の「Oriental Goro」(Season4)と変遷してきました。Season5では、野性的なメロディに乗せた「ンマヤ・ンマヤ」という曲です。コーラスは「ンマヤ」という謎の言語だけです。この曲を聴くと、タモリの往年のネタ「ソバヤ」を思い出します。すなわちタイトルバック曲は、裏番組のタモリへのオマージュであるのです。
更にあります。Season5最終話「東京都豊島区西巣鴨の一人すき焼き」のストーリーは、クライアントの依頼で、五郎が貸店舗の内見に西巣鴨を訪れるというものです。そのクライアントの名前は、森田です(演じるのは、Season5からタイトルバックのナレーターを務める野田圭一)。森田は用事があって内見に同行できませんでしたが、これには「森田(一義)は裏番組があるので出演できない」という意味が隠されています。ここにもタモリへのリスペクトを感じます。
『孤独のグルメ』へのタモリ出演は、番組制作側が強く願っていると思われます。Season4の特別編「真夏の博多出張スペシャル」には、うどん屋店主役で小松政夫が出演しています。小松と言えば、かつてタモリと一緒に製材所ネタなどを披露していました。タモリ、小松、そして五郎役を演じる松重豊も福岡県出身の同郷人です。『孤独のグルメ』スタッフのタモリ受け入れ態勢は整っています。もし出演が実現したら、料理が趣味であるタモリは見事な料理人なりすましを見せてくれるでしょう。
タモリ関連以外にも、Season5最終話には隠し味がありました。一人すき焼きを食べ終えた五郎は、心の声で「かっこいいスキヤキ」と言います。『かっこいいスキヤキ』は、久住が泉晴紀とのコンビで発表した、デビュー作「夜行」を収録した本のタイトルです。この言葉を台詞に挿んでくるところが、脚本家らスタッフの粋な計らいです。
原作も好きですが、ドラマ版『孤独のグルメ』も好きです。
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