AKB48時代の男性アイドル論 | 圭一ブログ

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圭一のブログです。1984年宮崎県生まれ

序論1.男性アイドルの特徴

日本における「アイドル」については、古くから様々な変遷はあれども、2013年現在、アイドルの代表と言えばAKB48、と言ってしまってとりあえず間違いはないと思う。

そもそもアイドルの「代表」という言葉がしっくりくること自体が異様なのだが、これはAKB48の存在感が、いい意味でも悪い意味でも大きすぎるということだろう。

現代において、男性にとっての異性アイドル、すなわち女性アイドルについて代表なものを挙げよ、と言われたとき、AKB48のような「歌手アイドル」の他に、「グラビアアイドル」「女優アイドル」「声優アイドル」等が挙げられる。

女性アイドルには多種多様なアイドルがいるため、カテゴリによって分類可能なのだ。

これに対し、女性のとっての異性アイドル、すなわち男性アイドルについては代表的なものを挙げよ、と言われたとき、
韓国人を含む「俳優アイドル」をほぼ唯一の例外として「ジャニーズ」「EXILE」「ヴィジュアル系バンドの○○」「演歌歌手の○○」というようにカテゴリではなく、固有名詞が挙げられるのではなかろうか。

何故ならば、男性アイドルとは大部分が「歌手アイドル」であるからである。「俳優アイドル」などの例外もあるにせよ、女性アイドルと比べると男性アイドルでは圧倒的に「歌手アイドル」が多いのである。

序論2.アイドルの本質

その理由を詳細に分析するには、男女の違いといった生物学的な見地から論じる必要があると思う。ここでは、その理由を「恋愛」というキーワードで簡潔にまとめておく。

男女の「恋愛」、もとい性行動の動機については、生物学的には以下のように説明できる。
 男=より多くの遺伝子を残そうとする
 女=より優秀な(一つの)遺伝子を残そうとする


これを突き詰めていくと、女性アイドルが「ソロの正統歌手アイドル」から「グループ歌手アイドル」へ変遷を遂げた理由も論じることが出来るような気がするが、それは一旦横に置いて、
ここでは男に特有の「恋愛のメカニズム」が、多種多様なジャンルのアイドルを産み出した、という結論に留めておきたい。

では、それに比して、女に特有の「恋愛のメカニズム」はどのようにアイドルと結びついたのであろうか。結論からすると、女は(男と同じ意味合いでは)アイドルを必要としなかった。

故に、大規模なエンターテイメントビジネスと結び付いた形でのアイドルしか商業的に成功しなかったのだ。それがすなわち「歌手アイドル」というカテゴリの専一化に結び付いた。

乱暴なのは承知の上で、以下のように総括することが可能だろう。
 男にとってのアイドル=「様々な形でパッケージング(商品化)された疑似恋愛」
 女にとってのアイドル=「疑似恋愛をフックとしたエンターテイメント(商品)」


本論1.男性アイドルの「音楽性」は単なるラベルである

さて、前置きはこれくらいにしてそろそろ本題に入りたい。

これまで述べてきたように、男性アイドルはそのほとんどが「歌手アイドル」である。このことは、女性アイドルに比べるとかなりダイナミックな「音楽的多様性」をもたらしている。

現代、アイドルのジャンルが細分化してしまったため、個々のアイドルの儲けが少なくなった、と言われる。

この構造には男女差があって、「男性向けアイドル」では「グラビアアイドル」「女優アイドル」…などと、ジャンルが細分化したことが理由であり、一方「女性向けアイドル」では同じ「歌手アイドル」というジャンルの中で「音楽性」が細分化したことが理由である。

では「音楽性の多様性」とはどのようなものであろうか。

ここには、ある重大な矛盾が生じている。それは、「音楽に”多様性”を求めるほど熱心な音楽ファンであれば、そもそもアイドルの楽曲を聴かないのではないか」ということである。

そもそもファンは楽曲に興味があるのではなく、アイドル自体に興味があるのだから問題はない、という反論があるかもしれない。もしそうなら、ファンは単にルックスで選べばいいのである。それで済むなら、こんなに「音楽性」が細分化することはないだろう。

この矛盾は「男性向けアイドル」には当てはまらない。具体的に説明すると、女性アイドルの場合、「正統派歌手アイドル」を除けば、その楽曲において「音楽性」が評価や選別の対象となることは少ない。

もちろん作曲者が違えば多少楽曲のテイストは変わるが、ももクロもAKBも「未完成な歌唱力をウリにした大量消費型J-POP」とひとくくりにすることができる。音楽のジャンル、として捉えた場合、どのアイドルも同じジャンルになってしまうのである。

これに対し、女性向けの男性アイドルの場合、「音楽性」には明確な違いがある。
 ジャニーズ = J-POP
 EXILE = R&B
 ヴィジュアル系 = ROCK(のテイスト)
 氷川きよしなどの演歌歌手 = 演歌

といった具合だ。

しかし、アイドルは「アーティスト」ではない。(特に日本では)

どういうことかというと、ジャニーズやEXILEが自分の「音楽性」なんか持っているわけはないしヴィジュアル系の有象無象のバンドは、オリジナルでない借り物の「音楽性」しか持ち合わせていない。演歌歌手も然り。
ということだ。
(付け加えると、本当に音楽が好きで「音楽性」を追求する人は、クオリティの低すぎるアイドルの楽曲には見向きもしない)

つまりどういうことかというと、男性アイドルは「音楽性」それ自体をセールスポイントとしているわけではなく「音楽性」とは単に「ラベル」なのである。

具体的には、以下のような「ラベル」なのである(独断と偏見でしかないが)。
 ジャニーズ(J-POP)= 平凡な女性歓迎
 EXILE(R&B)= おバカな女性歓迎
 ヴィジュアル系(ROCKテイスト) = 個性的な女性歓迎
 演歌(演歌) = おばさん歓迎

本論2.オンリーワンになるのではなく、分類されたい=所属したい女性たち

女性は、表面的にはアイドルが持っている「ルックス」や「音楽性」に惹かれてファンになるが、実際にはその裏に隠された「ラベル」に従ってファンになる。

何故、そのような回りくどい手続きが必要なのか?理由は以下である。
 ・そもそも女は(男と同じ意味合いでは)アイドルを必要としていない。
 ・アイドルに表面的に求めているのは、エンターテイメント(娯楽)である。
 ・アイドルに潜在的に求めているのは「所属欲求」である。


この「所属欲求」こそが、アイドルの本質的な要素である。「所属欲求」とはアメリカの心理学者、マズローが唱えた概念だ。

「マズローの欲求5段階説」では、
人間は下位欲求が満たされると、更に上位の欲求を求めるという原則のもと
人間の欲求を5段階に分けている。
下から順に、
 ①生理的欲求:食欲、性欲、睡眠欲の欲求
 ②安全の欲求:安全な衣食住に対する欲求
 ③所属欲求:集団や仲間に属したい/仲良くしたい欲求、
 ④承認と自尊心の欲求:集団や仲間から認められたい欲求、
 ⑤自己実現の欲求:自分を高め、活躍したいと思う欲求
である。

この原則が正しいと仮定して、現代日本の女性にあてはめてみよう。
(独断と偏見でしかないが)

①②の段階の女性というのは、先進国日本においては少ないと思われる。どんな社会階層、境遇の女性でも、幸いなことに安全な衣食住はほとんど保証されている。

③の段階の女性というのは、とりあえず短大に進学した女子、とりあえず働いている実家住まいのOLや安定した専門職、みたいなイメージだろうか。勉強や仕事を通じて自己実現を果たすというよりは平穏な暮らしや世間体や個人的な快楽を守っているという感じだ。

④の段階の女性というのは、自立した強い女性、というイメージがする。明確な目標を持った学生、モチベーションの高い女子社員といったところか。

⑤の段階の女性というのは、さらに強い女性。行動力に溢れた能力の高い学生、バリバリのキャリアウーマン、という感じだろうか。

誤解を恐れずに言えば、欲求の段階が高い女性ほど学歴や年収が高いのではないかと予想する。

このような認識の下、筆者は「アイドルにハマるのは③所属欲求の段階にいるものである」という仮説を提唱したい。

結論

どう考えても④⑤の女性には、アイドルにハマっているイメージを持つことが出来ないのだ。
この仮説は、アイドルにハマっている女性の学歴や年収を調べた統計があれば
一目瞭然だと思う。(が残念ながら探しても見つからなかった)

このことは、アイドルを「エンターテイメント」として消費する女性も「疑似恋愛」として消費する男性も共通であるはずだ。

このように考えると、女性はアイドルに要求しているものが、男性に比べて多い、という結論が浮かび上がってくる。すなわち、自分の所属する場所を、より明確にしたいという欲求である。

男に比べて、女は自分の所属する場所を明確にしたいと強く願っているのである。
 男=より多くの遺伝子を残そうとする
 女=より優秀な(一つの)遺伝子を残そうとする からだ。

「女性向けアイドル」というビジネスはそれにつけこんだビジネスである。「男性向けアイドル」との明確な違いは、そこだ。

「男性向けアイドル」は、世の中の男に対して「夢を売っている」と表現されることがある。あながち間違ってはいないだろう。ニセモノも多くあるかもしれないが、それも含めて夢には違いない。

繰り返すが、
 男にとってのアイドル=「様々な形でパッケージング(商品化)された疑似恋愛」
 女にとってのアイドル=「疑似恋愛をフックとしたエンターテイメント(商品)」
なのだ。

「女性向けアイドル」には夢などない。
単なる市場原理主義に基づいた商品であるだけでなく現実と向き合わされ、自分に適切なラベルを知らず知らずのうちに選び取るハメになるだけである。