女人源氏物語(全五巻) | 圭一ブログ

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圭一のブログです。1984年宮崎県生まれ

女人源氏物語〈第1巻〉 (集英社文庫)/瀬戸内 寂聴

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これはやばい!間違いなく世界一面白い小説だ。
今から1000年も前に書かれた小説なのに、全く古くなく、人の世の悲しみ、喜び、悲しみを根掘り葉掘り描ききってる。
(物語が読み継がれるにつれ、1000年の時間がさらに作品を深化させたのだろうけど)

源氏物語は現代語訳だと、与謝野晶子とか谷崎潤一郎大先生とか、田辺聖子とか
超一流の人が訳したものがいくつかあるんだけど、
これは通常の源氏物語と違い、物語が全て女の人のモノローグ(独り語り)で進んでいくという異色の作品。
しかも全54巻の物語が5巻に凝縮されているというやさしさ!

なので、省略されている部分もあり、また昔の話なので分からないこともあったり
人の名前が沢山出てくるし途中で変わったりもするので、
読み進めながらちょくちょくiphoneで調べたりしていたんです。

そうしたら、源氏物語がいかに長い間多くの人に読まれ、影響を与え、また研究されてきたかという歴史が分かって
すっかりはまってしまいました。

たとえば「雲隠」という巻がありまして、
これは巻の名前だけがあって、本文が無いんです。

何故かというと、諸説あるんですが一説によるとこうです。
かつては本文も存在したが、内容は第1部の主人公である光源氏の君の出家と死が描かれており、
人々がこれを読んで嘆き悲しみ、出家するものが後を絶たなかったため時の天皇が封印したとか!

そんなめちゃくちゃな!
当時出家と言えば、自殺にも匹敵するインパクトを周囲に与えるのであって
そんなに世の中に影響を与える作品が歴史上どれだけあるのだろうか。

この小説(あえて小説といおう)の魅力は、
平安時代の宮中の華やかな生活の描写や、光源氏の君の華やかな恋もそうなのだけれど
一つ目は多情な男に愛される女の苦しみ、嫉妬、そして純粋な少女が性愛に目覚めたり、成長するに従ってしたたかになっていく様子など。

二つ目は、最初は光源氏の君の栄華そのものといった物語が展開するのだけれど、青年期の終わりごろからみんな次々と不幸になっていくこと。誰が死んだの、誰が出家したがってるだの、出家しただの・・・ 世の中はいつの時代も悲しいことばかりなんだなって思います。

三つ目は、物語のクライマックス、薫(第二部の主人公であり、光源氏の君の息子※本当は違うけど)
が浮舟(薫と匂宮=光源氏の君の孫で薫とは1歳違い の二人に愛され悩み入水自殺。しかし未遂に終わり出家)
にとった態度。誠実そのものといった男がふとした拍子に見せる身勝手さ。存在そのものの軽さ。
人間ってなんなんだ!と思ってしまいます。

何年かかっても一生に一度は読んでおくと、日本に生を受けた甲斐があるってものです。

ちなみに、普通に読んでも理解が難しいので、まずはマンガ版で予習するのがおすすめです。

あさきゆめみし―源氏物語 (1)/大和 和紀

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