好きな人に抱く思いというものは

『その人を知りたい』という思いが根幹となる

 

そして『話がしたい』という欲求が生じる

 

幾つもの言葉を交わし

その人を知ろうと言葉を重ねる

しかし、どれだけ話をしてもまだ全てを知ることができない

 

そして『触れてみたい』という欲求が生じる

 

手に触れて、その人の体温を知り

肩に触れて、その人の逞しさを知る

しかし、それだけではまだ全てを知ることができない

 

そして『キスがしたい』という欲求が生じる

 

唇を重ね、その人の意思を知る

震える唇に、その人の覚悟を知る

しかし、それだけではまだ全てを知ることができない

もっともっと知りたいという衝動に駆られる

 

そして『抱かれたい』という欲求が生じる

 

身体を重ね、その人の鼓動を知る

その息遣いに、その人の命を知る

しかし、それだけではまだ全てを知ることができない

もっともっと、もっともっと知りたいという欲求に駆られる

 

そして『ずっと一緒にいたい』という欲求が生じる

 

おそらくは、その人の全てを知ったとき

もしくは全てを知ったつもりになってしまったとき

『好き』という感情は消え失せてしまうだろう

 

『好き』とはつまり『わからない』ということ

わからないから、知りたいという『好意』があり続ける

 

人と人は生涯分かり合えることはできない

しかし分かり合えることができないから

人と人は生涯を愛し合えることができる

 

この世で一番好きな人は

この世で一番わからない人