街



忘れたい出来事や、忘れたい季節や、忘れたい時間や、忘れたい街並みや。


人はどんどん忘れる生き物だから、そんなの簡単だと思ってた。


でも人は、忘れようと思って忘れることだけはできない生き物。


ずるいな。ずるいよ。


ここにいるのは私だけだなんて。


だけどもうね、そんなんじゃないんだ。大丈夫だよ。


ここには忘れたいようで忘れたくないようなものが多すぎるだけ。


君じゃなくて、この街が。


なんだかいろいろ思い出させるのです。



いつかは変わる。


この街並みが、別の街に見えてくる日がそのうちやってくるから。


忘れたいもの達が、いいふうに思い出に納まる方法は、きっと一つしかないよね。


新しい色に染まる街並みが、楽しみなような気もしてるんだ。



なのに君じゃなくて、この街が。


切ない気分を呼び起こすのです。




今はただ、この冬をどう過ごそうか、そればかりを考えてるよ。


今年の冬も好きになれればいいな。