某ショップに寄りました。
あえて「某ショップ」と書かせて下さい。
このショップによると、いつも思い出すことがあります。
それはもちろん、セゾンプラチナアメリカンエキスプレスカードのデスクとのやりとりです。
本人達は図々しく「コンシェルジュ」、いえ、恥知らずにも「コンシェルジュ」と言い張っている、アレです。
やつらのそれは、あたくしからいわせれば「混」シェルジュです。・・・・くだらん。(←自分にツッコミ)
それはかなり前の事になりますが。
むか~しむかしのお話しです。はじまりはじまり・・・・・・
とあるところに、「セゾンプラチナアメリカンエキスプレスカード」という、「SAI◎N」と大きくマークの入った、恥ずかしい鼠色のカードを持った姫(美女)がいました。
(←ここ、ツッコミどころじゃありませんから。)
これには「コンシェルジュ」という、困ったときに頼りになってくれる(はず)まるで「魔法のランプ」みたいな機能がついた、素敵なカードでございました。
そのはずでございました。
えぇ、そのときまでは。
そう思っていました。
そうあるべきでした。
そうあってしかるべきカードでした。
ある日姫は思いました。
「○○ショップで買い物がしたいわ。」
普通、姫は買い物などしない身分のはずですが、そう思ったのでした。
それも全国展開している、いえ、世界展開しているあるショップで。
「あぁ、でももうこんな時間。営業時間が8時までだったらもう間に合わないわ。でも、9時までだったら、駆け込みで間に合うかもしれない。」
普通、姫は「駆け込み」なんてしないであろう身分のはずですが、そう思ったのでした。
「あぁ、何時なのかしら。あのショップの閉店時間。めっちゃ気になるけど、いま外だから調べられへんわぁ~」
普通、姫は関西弁ではないはずですが、そう思いました。
「そうだわ。せっかくだから、セゾンプラチナのコンシェルジュってヤツに聞いてみましょう。」
この決断が運の尽き。
姫は「営業時間が分からない」という他に、一層のフラストレーションをため込むことになってしまうのですが、そんなことは知るよしもありません。
姫は電話をかけました。
トゥルル、トゥル・・・・
「ぁい、セゾンプラチナデスクです。」
姫が普段話すこともない、いかにも下賤な感じのおばはんが出て、姫は驚きました。
「プラチナデスクではないのですか?」
思わず聞いた姫に、おばはんは答えました。
「はぁ、そうです。なにか?」
「えっと・・・・・」
驚いた姫は、二の句が継げませんでした。
「ご用は何ですか?」
「いったい何で電話してきたの?アンタ」
言葉の端にそう含まれています。
そう、それはまるで悪徳商品を売りつけるセールスマンを相手にする、カーラーを頭に巻いたホステスのようだわ・・・。(←悪徳商品?)
セールスマンとか、ホステスとか、姫なら普通は知らないはずですがそう思いました。
「あっ・・・・・あの・・・・・・誠に恐れ入りますが・・・・・○○ショップの営業時間を知りたくて・・・・・今、外で分からなくて。でも行って終わっていたらアレですし・・・・・」
おそるおそる用件を繰り出した姫に、おばはんは言いました。
「何店ですか?」
「えっ?」
「○○ショップでも、色々ございます。何店の営業時間をお調べすればよろしいですか?」
言葉は丁寧ですが、まるで吐き捨てるような言い方です。
姫は、カーラーを頭に巻いたホステスが、道ばたで、噛んでいたガムをペッ!と吐き出す姿を思い浮かべました。
普通、姫でしたら「ガムをペッ!」とか知らないはずなのですが、姫はそう思ったのです。
「新宿店です・・・」
姫はもちろん、上流社会しか知りません。(←ここ、ツッコミどころではありません。その2)ので、もうビクビクしています。
「新宿店ですね?!」
おばはんは言いました。
「もっとはっきり言えよ。」
言葉の端にそう含まれているようです。
それでも姫は息を深く吸い込んで、踏みとどまって言いました。
「それではよろしくお願いします・・・」
「切らないで!」
電話を切ろうとした姫の携帯から、おばはんのそういう叫び声が聞こえました。
普通、姫なら携帯を持つことはないはずですが、そのときはなぜか持っていたのです。
「切らないで下さい。すぐにお調べできますので。」
「ふん、この程度のことで、いちいち折り返ししてる暇なんてあっかよ。こちとらやる気ゼロなんだよ!」
そう言っているようでした。
普通、姫なら「こちとら」とかいう言葉は知らないはずですが、そのときの姫には奇跡的に浮かんできたのです。
「・・・・・・・」
無言の時間が続きます。
「保留音とか、ないのかしら?」
姫は思いました。
普通、姫なら「保留音」とかあることすら知っているはずがないのですが、
姫は知識と教養が深くあそばれていらっしゃるので(←ここらへんの日本語の言い回し、びみょ~)、知っていらしたのです。
下々の者どもが、そういうツールを使っているということを。
「ありません。」
受話器から突然おばはんの言葉が聞こえました。
「お調べしましたが、○○ショップに新宿店というのはございません。」
「頭おかしいんじゃないの?」
姫は思わず言いそうになりました。
二日前に、○○ショップの新宿店の前、通ったのよ?営業していたわ。
二日前にあった店がなくなるなんて、あるわけ?
二日で?
爆破でもしたのかよ、なめりきゃ!(←アメリカのこと。アメリカンエキスプレスのデスク風に発音すると「なめりきゃ!」となる)みてーに。
ああん?
でも、姫はかなり上質な社会で情操教育を受けていらしたので、そんなことを言葉に発するわけがございません。(←頭の中で罵倒してもか?)
丁寧に聞き返されました。
「二日前にはございましたが・・・・。」
「でも、ホームページで検索したのですが出てきません。もしかしたらホームページに掲載してないのかもしませんね。吉祥寺とか、原宿とかは載っていますが。」
吉祥寺店より、原宿店より早くできていた新宿店が載ってねーはずねぇじゃねーかよ。節穴メス狸め。
姫は心の中で思いました。
おばはんはたたみかけるように言いました。
「ホームページに載っていればご案内できますが、載っていないので分かりませんね。吉祥店か原宿店の電話番号を教えましょうか?知ってれば教えてくれるかもしれませんね。」
ものすごい放られかた。
姫は驚きました。
白雪姫でたとえるなら、「毒林檎」どころか、その「毒林檎」を「おら食えよ!」と木の上から投げつけられている、そんな感じでした。(←白雪姫にそんな場面はない。)
そう、『さるかに合戦』風です。
今、「さるかにかっせん(さるかにがっせん)」→「去るか煮かっせん」と変換されました。
「去るか」それとも「煮」かせんか!的な意味と捉えたのでしょうか。私のPC。
セゾンプラチナデスク並みに使えません。
さておき・・・・・
「これをセゾンでは代替え案」とでも思っているでしょうか?もしかして。
姫は途方に暮れました。
吉祥寺店に電話して「新宿店の閉店時間を教えて下さる?」って聞く・・・・の?
「聞き方を一つ間違えたら、頭のおかしい人だと思われるわ。あたし。確実に。」
あわてた姫は
「吉祥寺店でひとまず新宿店の電話番号を聞いて、新宿店に電話を掛けて営業時間を尋ねる。あわよくば吉祥寺店で知らないか聞いてみる」
という選択肢があることが、咄嗟には浮かびませんでした。
至れり尽くせりのじいやとばあや(←姫にじいやとばあや?)、いえ、侍従がいたものですから、こんなシチュエーションは初めてだったのです。
「いえ、いいです・・・・・」
姫の言葉に、セゾンプラチナデスクのおばはんは、明らかにホッとしたように
「そうですか、それでは失礼します。」と言って、あわてて電話を切りました。
「これ以上、なにか頼まれないうちに切らないと・・・」という感じに、そそくさと。
姫は優しい心の持ち主@ただしあくまで本人談だったので、「ありがとう」のひと言でも言うつもりでしたが、それすらもできませんでした。
姫はお空を見上げました。
そこには暗く輝くネオンがありました。
星も見えない、ネオンだけがまばゆく光る空。
そこには誠意とか思いやりとか、そういったものをすべて飲み込む暗黒のお空が深く深く広がっているようでした。
「あのお空にもあるのかもしれない。暗く輝く星―暗黒星が。」
姫はぽつりとつぶやいて、震える肩をかばうように両手で包み込んで歩き出しました。
その行く先は誰も知りません―。