5月11日午後のやや遅い時刻、だが夕暮れになる前に仁たち一行はフォンデに着く事ができた。
このあたりまで来ると、若干気象も変わってきたような気がする、と仁は思った。
乾燥している事に変わりはないのだが、強いて例えるなら、異常乾燥注意報が出るほどの乾燥と乾燥注意報止まりの乾燥と言えばいいか。
10パーセント台と20パーセント台の違い、ということである。
「やっぱり屋根や庇が小さいな、雨も少ないんだろうな」超級脂肪燃焼弾
そんな呟きが口をついて出る。
「ジン、何か言ったかい?」
「いや、別に」
仁、ラインハルト、マテウスは連れ立ってフォンデの宿へと向かった。
「今夜と明日、それで明後日はロイザートだ。長かったなあ……」
夕食時、ワインを手に、ラインハルトがしみじみと言った。
「ラインハルトはいつ国を出たんだっけ?」
マテウスが考えながらそう尋ねた。
「うーんと、去年の春先、3月1日だからもう1年以上になるな」
「帰ったらどうするつもりなんだ? 外交官続けるのか?」
そう言ったマテウスは、仁に説明する。
「我が国の慣例として、外交官は一旦帰国したら、希望により3年間は別の職務に就くこともできるんだ」
「なるほど」
仁はそれを聞いて納得する。確かに、国外に出てばかりではいろいろと不都合な面もあるだろう。
「ラインハルトは帰ったら結婚か?」
「ああ、当然そうなるな。ベルチェにも1年以上あっていないしな」
するとマテウスがにやにや笑いながら口を挟む。顔が赤い。
「ベルチェはきれいになったぞ。俺も半年会っていないからな、きっと更に美人になってるに違いない」
見た限り、マテウスは酒に弱いようだ。1人称も『俺』になっている。
「ああ、楽しみだよ」
ラインハルトは適当に受け答えしている。ラインハルトはマテウスよりは酒に強い。
その夜は、ラインハルトにゆっくりさせてやろうと、仁は早めに自室へ引き上げた。
そしてこっそり外へ出て馬車に向かい、礼子と共に転移門ワープゲートで蓬莱島へ跳んだ。
『お帰りなさいませ、御主人様マイロード。お帰りなさい、礼子さん』
仁と礼子を向かえる老君の声が響く。
今夜はもうカイナ村には行かないつもりだ。第一、時差の関係で、もう向こうは夜の11時頃である。
「明日、またカイナ村に行く予定だ。その時、ローランドさんから注文されたボールを持っていくから、用意しておいてくれ」
『かしこまりました。野球ボール、手まり、ドッジボール各100でしたね?』
「そうだ。素材はあるな?」
『はい、ガタパーチャもどき……『お茶の木』の生ゴムですね、十分な在庫があります』
「よし、それじゃあ、エルザにもやり方教えたいから、今からカイナ村のお茶の木に樹液採取の容器をセットしておいてくれ。量はいらないから3箇所くらいでいい」
『かしこまりました』
一通り指示を出した仁は、今度は報告を聞く事にする。
『塩をカイナ村に送らせないようにした嫌がらせはワルター伯爵の仕業です』
それを聞いた仁は憤る。
「またあいつか……で、証拠は?」
『はい、状況証拠しか無いのです。やり方が巧妙で、部下の部下が町で雇ったような男に命じてやらせていますので、なかなか尻尾を出しません』
「ふうん。だが、確かな証拠を掴んだら王国へねじ込むとして、このままやられっぱなしというのも癪だな」
仁がそう呟くと、すかさず老君が提案してきた。
『そちらはお任せ下さい。引っかき回してやりましょう』
勢い込む老君というのも珍しい。やはりカイナ村へのちょっかいに憤っているのだろう。
「分かった、任せよう。俺の方はもうすぐショウロ皇国首都だから、2、3日帰れないかもしれない、よろしく頼む」
『はい、行ってらっしゃいませ、御主人様マイロード』
そして仁は再びフォンデへと戻ったのである。
翌12日朝はいつも通り、8時出発。
午前中はまた馬車に1人で籠もらせてもらい、仁はまたまたカイナ村へと跳んだ。
「いやあ、ジンさん、これで助かります!」
仁と礼子、そしてバトラーAが抱えてきたゴムボールを受け取ったローランドはご機嫌である。
こちらは10時過ぎ、仁がそれまでかかってボールを作ってくれたのだとローランドは思っていた。
あと1日、ローランドはカイナ村に滞在するとのこと。理由はもちろん商談である。
お目当ては勉強会で使っているペンである。金属で作ったペンは軽く、磨り減りにくい。
勉強会を見たわけではなく、たまたま村長のギーベックが使っているのを見て飛び付いたのだ。
だからホワイトボードやフエルトペンは見ていない。それでも金属ペンは画期的なのだ。韓国痩身1号
何故かといえばこの世界のペンはまだ羽根ペンなのである。以前村長が買ったのもこれであった。
「この金属ペンは素晴らしいです! 是非ラグラン商会で売らせて下さい!」
「ええ、いいですよ。これは一体型ですが、ペン先だけ取り替えられる型の方がいいでしょう?」
単価のことを考えると、ペン先交換式の方が一般向けになるだろう。ローランドはそう考えた。
「そうですね、それでは交換式ペン先100本、ペン軸50本、そして一体型ペン50本をお願いします」
「せ、専務! 多すぎませんか?」
横で聞いていた新人、ボーテが慌てた。いくらなんでもいきなり多すぎる注文である。
「ん? 多くはないだろう? 売り上げもあるし、予算もある。十分支払いは可能だぞ?」
彼の言う多すぎる、というのは、そんなに作るのが間に合わないだろう、と言う意味である。
そしてローランドが多くはないだろう、と言っているのは買い付けの数量のことである。微妙に噛み合っていない。
「まあ、間に合いますよ」
そう仁は答え、エルザを見た。
「このエルザにも作れますから」
エルザはいそいそと仁のそばにやってくる。
「ん。手伝う」
「ああ、もし俺がいない時にローランドさんが見えても大丈夫なようにちゃんと教えていくから」
「ん、任せて」
というわけで、仁はエルザと共に工房へ入った。
軽銀64でペンを作るのはエルザももう慣れたものである。但し今回はリン青銅で作るが。というのもこの村で軽銀は採れないからだ。
「まず俺がリン青銅を作ってみせる」
錫9パーセント、リン0.15パーセント、残り銅。高強度でバネ性が高い。電気接点などにも使われる。かつて仁のいた会社でも扱っていた。
「『合金化アロイング』」
リンは、不純物として鉄中に含まれる。ゆえに鉄の精錬時に抽出エクストラクションで分離したものを貯めておいたのである。
あっと言う間に10キロほどのリン青銅が出来上がった。いよいよペン先の製作である。
エルザには一体型を50本作ってもらうことにした。
「『変形フォーミング』」
エルザの手元で、リン青銅が形を変え、ペンとなっていった。
「いいぞ、ちゃんと出来てるな。その調子で頼む」
「ん」
エルザが技術をマスターしているのを確認した仁は、自分もペン先の製作に取りかかる。
こちらは小さいから、使うリン青銅の量も少ないかと思いきや。
「!?」
横目で見ていたエルザは目を見張った。仁は、10個のペン先を一度に作っているのである。
正確には、10個のペン先がくっついた枝。エルザは知らないだろうが、プラモデルの部品のように、ランナーと呼ばれる枝から10個のペン先が生えているものを仁は作り上げていた。
「すごい、これがジン兄……」
少しは自分も上達したと思っていたエルザは、仁の実力を垣間見て、まだまだ先は遠いことを実感していた。
が、そこで落ち込まず、努力する資質がエルザにはある。
「せめて、2つくらいなら」
2本分の一体型ペン、つまりペン軸の先でくっついたような形を作るべく、魔力、イメージ、精神力を集中するエルザ。
「『変形フォーミング』……」
そして、見事に成功させた。
「できた!」
エルザには珍しい、嬉しさで溢れた声に、仁も振り向く。そしてエルザの作り出したペンを見た。
「おお!? 凄いじゃないか!」
褒められて頬を染めるエルザ。
「その調子で頑張れ」
「ん」
一体で作ったものは分離セパレーションで分離し、微調整して完成。
最後にペン軸を硬木で50本。
こうして、1時間足らずで注文のペンは完成したのである。V26 即効ダイエット
塩相場!
5月11日、シャルル町にて。
「塩を売って欲しい」
そんな声を掛けて回る一団があった。
「今、ちょっと品薄なので」
「構わん、倍払う」
「そ、それでしたら……」
こんな感じで、商店の店頭からはたちまちに塩の在庫が無くなっていった。
同日、ドッパ、ラクノー、トカ村でも同じような光景が見られた。
クライン王国には海がない。そして今のところ王国内において、岩塩の存在は知られていなかった。
よって塩は全て輸入品であり、輸入先はセルロア王国が8割以上を占めていた。
塩の有用性は知られていたから、当然クライン王国としてもある程度の対策はしている。
その一つが塩の備蓄であり、もう一つが輸入先の分散である。
首都アルバンには『塩倉庫』があって、常時数百トンの備蓄がされている。が、それを管理するのは王であり、許可なく持ち出すことはできなかった。
また、東に国境を接するレナード王国からも僅かに輸入されているが、元々閉鎖的なレナード王国との貿易額は微々たるものであった。
むしろ、セルロア王国を経由して運び込まれる、エゲレア王国産の塩の方が多いほど。
いずれにしても、重量のある塩を長い距離をかけて運ぶのであるから、その値段は元の倍以上になるのは当然であった。
「正規の塩でなくてもいいから、売ってもらえないかい?」
こんなやり取りが交わされることもある。
クライン王国において、塩はすべて首都アルバンに集まり、国が認可した商人だけがそれを販売することができることになっている。
とはいえ、この認可は、塩売り上げの2割を税として納めるならば誰にでも下りるものであった。
「相場の3倍出すぜ!」
「それなら売ってもいいかな」
専売にはなっていないから、相場は需要と供給の関係で変動する。今、一部の地域では塩の値段がじりじりと上昇しつつあった。
「かなり買い占めたな」
「金もかなり使ったがな」
「かまわないさ。時期が来たら売りに出せばいい。上手く売れば儲ける事もできる」
そんな会話を交わしている一団があった。ワルター伯爵の手下達である。
人間が1日に摂取すべき塩は個人差もあるがおおよそ8グラム前後。無駄も出るから、10グラムとすると、1ヵ月300グラム。
5人家族なら1.5キロ。塩漬けなどにも使うから、平均2キロの塩が消費される。
今、彼等が買い占めた塩は4トンを超えようとしていた。
「まったく、エリアス王国だと1キロ30トールだというのに、それがこっちだと150トールだからな」
「海がないから仕方ないさ。セルロア王国だとキロ50トールするんだぜ? うちの国はセルロアから買ってるからな、高いのも仕方ないさ」
「その高い塩を更にキロ450トールで買うなんて、伯爵は何考えてるんだ?」
「知るか。我々は命じられたことをやればいいのさ」
結局彼等はその日、計5トンの塩を購入した。強効痩
翌日12日。噂を聞きつけた塩商人がシャルル町にやって来ていた。
その中に、面白い商人がいた。ゴーレムを連れた塩の行商人である。
ゴーレムに荷車を牽かせ、売り歩いているらしい。それが珍しいと評判を呼び、大勢お客が集まっていた。
「おお、こりゃいい塩だ。さらさらで、真っ白で」
「でしょう? 遙かエリアス王国産の塩ですよ! 少し高いですが旨さは折り紙付き! さあ買った買った!」
「1キロくれ」
「はい、200トールになります」
「俺も1キロ!」
「はい、ありがとうございます」
その様子を見たワルター伯爵の手下達は目で合図し合うと、商人に近づいていった。
「おい、買うぜ」
「はい、いかほど差し上げましょう?」
「全部だ」
「はっ?」
「お前の持って来た塩全部を買うと言ったんだ」
「ありがとうございます。しかし、他のお客様がお買いになる分が……」
「つべこべ言わずに売れ! キロ600トール出してやる」
「は、はあ……」
「売れっつってんだよ!」
展示台をばあん、と音高く叩く1人の男。その剣幕に、集まっていたお客は散り、商人も諦める。
「わ、わかりました。でも、量が多いですよ?」
「どのくらいあるんだ?」
「えーと……」
商人は手元の帳簿を確認する。
「5トンほどあります」
「5トンだと!?」
「はい。ですから、何にお使いになるのか存じませんが、2トンくらいで勘弁していただけませんかね」
そう商人がいうのだが、
「い、いや、全部と言ったら全部だ」
と譲らない。そうまで言われてはその商人も、もう言うことを聞くしかない。
「そ、それでは、この荷車に乗っている塩、ご確認下さい。60キロほど売ってしまいましたので、4940キロございます」
「よし、確認させてもらう」
男達はそう言って、10キロの天秤ばかりを持ち出し、手分けして塩の重さを量っていった。
「……間違いなかった」
半日近く掛かって4940キロの塩を量り終えた男達は疲れた顔だ。
「ほら、これが金だ」
そう言って、金貨と銀貨の入った袋を渡す。
「ありがとうございました」
商人は手早くそれを数え、296万4000トールあることを確認し、空の荷車をゴーレムに牽かせて街角に消えていった。
「ふ、馬鹿め。こっちは幾ら大金を出しても懐は痛まねえんだよ」
と捨てゼリフ。そして遠くからこちらを眺めている男に目配せをした。左旋肉碱
「……せいぜい大金を持って浮かれているがいい。今夜中に『回収』させてもらうからよ」
ラクハムとソー、ズクでも同様に、このような光景が見られていた。
その夜。
「……行商人はどうした?」
「そ、それが」
「どうしたと聞いているんだ!」
「……消えました」
「なにい!?」
「あの後、こっそり後を付けていったんですが、とある角を曲がったら、空の荷車だけが残っていて、ゴーレムと商人がいなくなっていました」
「そんな馬鹿なことがあるか! 人間はともかく、あんなでかくて鈍重なゴーレムが姿を隠せるものか!」
そうは言ってみても、いなくなったものが出てくるわけではない。
どうせ後で『回収』するつもりで払った296万4000トールだが、結局戻ってくることはなかったのである。
『ごくろうさまです、レグルス35、ランド54』
蓬莱島で、老君は行商人に化けた第5列クインタのレグルス35と陸軍アーミーゴーレムのランド54を労った。
この2体で組み、シャルル町で塩を売りさばいてきたのである。
「やはりといいますか、売った金を取り返しに来た奴等がいたようです」
『御主人様マイロードの知識にあった通りですね』
定番時代劇で、年貢などが払えずに困ったお百姓が、地方の顔役に娘を売って金を作る。すると、金を受け取った帰り道、盗賊に化けた子分がその金を取り戻す、というアレである。
「はい。荷車は置いてきてしまいましたが」
『構いません。何の変哲もない荷車ですから。それよりも例の伯爵に散財させた方が効果大です』
他にラクハムではレグルス36とランド55が。そしてソーではレグルス37とランド56。ズクではレグルス38とランド57が、それぞれ塩を高値で売りさばいてきたのである。
『合計20トン、金額にして1200万トールですか。これは財政的に大きな痛手でしょう』
約1億2000万円。個人が出すには少々大きな金額であろう。
そして老君は更に一手を打つ。
『数日したら、小規模に塩を売りましょう。元通りのキロ200トールで。今度は奴らには売ってはいけません』
これにより、塩の相場を正常に保つつもりなのだ。
『不足しているからこそ高く売れる。しかし、物が余っていれば買い手は付かず、結果、安売りしなければならなくなる』
仁も経済には疎いので、こんなレベルでしか老君も企めなかったが、ワルター伯爵の財政を逼迫させるにはかなり効果があったようである。
「何故だ! 何故あれだけの塩を買い占めたのに塩が不足していないんだ!」
そんな悲鳴にも近い叫びがどこかの屋敷から聞こえたと言うが真偽は定かではない。終極痩身
