ゾーンダイエット

ゾーンダイエットというのは、アメリカでもう20年も前から人気のダイエット法です。

アメリカのバリー・シアーズ博士が、食べ物とホルモンバランスの関係を研究し続けて、医学的な見地からたどり着いたこのダイエット法です。

ルールはかんたんで、炭水化物、タンパク質、脂質の割合を4:3:3にするだけです。
炭水化物を40%に押さえる、高タンパク質ダイエットです。

近年、グレリンなどのホルモンの発見によって、シアーズ博士の考え方が正しいことが証明されてきました。



ゾーンダイエットの蛋白質必要量

ゾーンダイエットは、まず必要タンパク質を計算して、その量を基準にして、4・3・3の割合で食材を食べます。

必要タンパク質は、除脂肪体重に活動レベル指数を掛け算して計算します。


活動レベル指数

座りっぱなしの人 = 1.1
1日30分程度歩く人 = 1.3
1日30分の運動を週3日 = 1.5
1日30分の運動を週5日 = 1.8
週に2.5時間以上の運動をする人 = 2.0
週に5日はウエイトトレーニングをする = 2.2
スポーツ選手 = 2.2



食事摂取基準との違い

私の身長は身長178cm、体重60Kg、体脂肪率12%です。

タンパク質必要量は、除脂肪体重に活動レベル指数を掛け算して出します。


私の除脂肪体重は、

除脂肪体重 = 60 - 60 x 0.12 = 52.8 Kg です。


活動レベル指数

私は、毎朝1時間30分のジョギングをしています。これは、活動レベルが週に2.5時間以上の運動なので、活動レベル = 2.0 に当てはまります。


したがって、必要タンパク質は、

タンパク質 = 52.8 x 2 = 106g ということになります。


タンパク質の必要量が決まったら、今度はカロリーベースで、4・3・3の割合になるように、脂質と炭水化物の必要グラムを計算します。


換算が少しややこしいのですが、整理するとつぎのようになります。


タンパク質のカロリー = 106g x 4 = 424Kcal

脂質のカロリー = 47g x 9 = 424Kcal

炭水化物のカロリー = 140 x 4 = 560Kcal

カロリーの合計 = 1408Kcal となります。


必要栄養素の合計カロリーが1408Kcalになりましたが、これはちょうど私の基礎代謝に相当します。つまり、ゾーンダイエットは炭水化物を半分にして、摂取カロりーを基礎代謝まで落とすダイエット法です。


下図は、厚生労働省の食事摂取基準ですが、ゾーンダイエットと食事摂取基準がよく似ていることがわかります。


食事摂取基準は、現在体重を維持するための栄養基準です。

これに対して、ゾーンダイエットは減量するための食事法です。

ゾーンダイエットは、減量のためには、食事摂取基準のうちの炭水化物を60%から40%に減らしなさい。その代わり、タンパク質を多めに摂りなさいというものです。



食事摂取基準の欠点

厚生労働省の食事摂取基準では、脂質の目標量の下限が20%以上になっています。

最小必要量が総カロリーの何%という決めかたでは、食べ過ぎている人はますます食べ過ぎますし、痩せすぎている人はますます痩せすぎることになります。


食事摂取基準のもう1つの欠点は、個人には「推奨量」を適用し、集団給食には「推定平均必要量」を適用するとなっていることです。

個人が皆んなが推奨量を食べると、統計的には、国民のほぼ全員が肥満してしまうことになります。たとえば、集団給食に推奨量を適用すると、残飯が多量に余ってしまいます。


実は、食事摂取基準というのは、決して理想的な栄養配分を示したものではないのです。

にも関わらず、多くの人が、食事摂取基準を最適の栄養バランスと信じて、栄養指導の拠りどころにしているところが問題です。

私も以前は、栄養バランスの良い食事をすれば、最小のカロリーで満足感が得られる良い料理になるのだと信じていましたが、そうではないのでした。


たんぱくしつ.jpg



山梨医大の実験

山梨医大で学生7人に、朝食で炭水化物食、蛋白食、脂質食を食べてもらって、食後の空腹感と血中脂肪酸・アミノ酸濃度の変化を調べました。その結果、


1) 満腹感が強い食事は、蛋白食、脂質食、炭水化物食の順でした。
2) 炭水化物食がもっとも空腹感が強くて、食後5時間で空腹感に耐えられない者がいました。

3) 脂質食、蛋白食は5時間たっても空腹感がありませんでした。



ダイエット7


満腹感は血中の中性脂肪とインスリン濃度に比例し、血中の総タンパク濃度に反比例しました。

血中のBCAAアミノ酸 や芳香族アミノ酸の相関が高い傾向であった。
リノール酸とα―リノレン酸のみが満腹感と有意な相関を示した。


グレリン
主に胃から分泌され、強力な成長ホルモン分泌促進作用などを有するペプチドホルモンです。1999年12月、国立循環器病センター研究所生化学部の寒川賢治博士らが、ラットの胃から単離・構造決定に成功しました。

ワシントン州ワシントン大学医学部のFoster-Schubert氏らは、16人の被験者に対して、


1) 炭水化物80%のドリンク(500Kcal)、
2) タンパク質80%のドリンク(500Kcal)、
3) 脂質80%のどりんく(500Kcal)

をそれぞれ別々の日に摂ってもらい、グレリンとレプチンの血中濃度、ならびに、空腹感を調べました。その結果は、下図のようにでした。

グレリン濃度.JPG


蛋白質が多い食事では、グレリン濃度が6時間も低いままでした。

炭水化物食は、グレリン濃度が4時間だけ低く、その後は上昇しました。

脂質食は、タンパク質食よりもさらにグレリン濃度を低く抑えました。

なお、レプチンの血中濃度は、いずれのタイプの食事でもあまり変化がありませんでした。


ゾーンダイエット

実は、3月に神戸マラソンの申し込みをしていました。

ところが、6月に抽選漏れの通知がきて、ちょっと気が緩んで、最近は体重が2キロほど増加しました。間食の食べ過ぎが原因です。


ゾーンダイエットのいうとおり、炭水化物を半分に減らして、タンパク質をたくさん食べるとどうなるでしょうか?


ゾーンダイエットは、アトキンス式やスーパー糖質制限食のような極端なダイエットでありません。

厚生労働省の食事摂取基準のままで、炭水化物を半分に減らし、基礎代謝以上のカロリーを摂りましょうというダイエットです。


とにかく、体験してみることにしました。冷凍鶏肉、冷凍の手羽先、ささみの肉を大量に買いこんできました。

この研究によって、炭水化物食は早くお腹がすくことと、高タンパク食は、空腹を感じにくいことがわかりました。