ダイエットで、食前の運動と食後の運動のどちらが効果的ですかという質問や、ウォーキングとジョギングでは、どちらが効果的ですかという質問が、数多く寄せられています。

ウェブサイトでも、有酸素派のサイトと無酸素派のサイトがあって、それぞれ主張が違います。

有酸素運動無用論者は、摂取カロリー<消費カロリーで痩せるのだから、運動は食前でも食後でも、運動量が同じだった結果は同じだと主張します。


ウォーキングとジョギングの比較では、運動強度が高いほど消費カロリーが大きくなるので、ジョギングの方が効果的だと主張します。


ダイエットに関して、カロリーがすべてだと信じている人は、つぎのように考えています。
運動でパワーを上げると、グリコーゲンの燃焼が多くなり、脂肪の燃焼が低下するのは事実です。
しかし、運動時の脂肪の燃焼比率などどうでもよく、痩せるかどうかはカロリーがマイナスになっているかどうかだけに依存する。


脂肪の燃焼比率は関係がない。

もしも、脂肪の燃焼比率が高ければ良いのだったら、運動をやめてで安静にしておれば、筋肉は100%脂肪を燃焼する。そんなバカなことはない。

痩せるかどうかは、カロリーだけに依存するのだと主張します。

実際のところ、摂取カロリーと消費カロリーが同じだったら、低強度の運動をしても高強度の運動をしても、脂肪の燃焼量はおなじだったという研究結果もあります。


脂肪の燃焼量における運動強度の効果
低強度の有酸素運動と高強度の有酸素運動で共に400kcal消費させて、24時間単位で脂肪燃焼量を比較したところ、有意な差が生じなかった。
http://jap.physiology.org/content/92/3/1045.full


しかし、よく考えてみてください。

私たちのダイエットが難しいのは、カロリーだけに依存しているわけでないから難しいのです。

先の研究レポートのように、摂取カロリーと消費カロリーが同じだったら、ジョギングでも筋トレでも、脂肪の燃焼量が同じになるのは当たり前です。

私たちのダイエットが難しいのは、摂取カロリーを減らすのが難しいことと、摂取カロリーを減らしただけでは、なかなか体重が減らないことです。


もっと、体重を減らすためには運動で消費カロリーを増やします。

ところが、運動をすると、お腹がすくので摂取カロリーが増えます。

摂取カロリーを増やさずに、消費カロリーを増やすには、どんな運動がよいのでしょうか?
食前と食後、ウォーキングとジョギングのどちらが、摂取カロリーを増やさないで、運動の消費カロリーが増やせるでしょうか?そのことが、尋ねられているのです。


運動をすると食べる量が、どうしても増えてしまうこと、皆さんが経験ずみです。


摂取カロリーと消費カロリーが同じだったら、運動強度と脂肪の燃焼量は関係ない、などいう回答は的外れです。

それは上から目線で、男の目線です。質問者の目線に立って考えたら、違ったものになってくるはずです。


摂取カロリーと消費カロリーが同じだったら、脂肪の燃焼量は同じなのだから、食前でも食後でも、結果は同じなどと回答するのは、そこで思考が止まってしまっている証拠です。


脂肪はいくら消費してお腹がすかない
人体には、膨大な量の脂肪が貯蔵されているので、運動で脂肪をいくら燃やしてもお腹がすきません。

一方、筋肉に貯蔵されているグリコーゲンは、人体にに300gしか貯蔵されていません。
このグリコーゲンは、本来は敵に遭遇したときに、一目散に逃げるための緊急用のエネルギーです。

グリコーゲンは炭素と酸素が1対1で結合した物質なので、宇宙ロケットのように無酸素で燃やすことができる燃料です。いわば、筋肉のロケットブースターのようなものです。
グリコーゲンは緊急用エネルギーなので使ったら、すぐに補給する必要があります。
だから、グリコーゲンを使うとお腹がすくのです。


インスリンとグルカゴン
食後に分泌されるインスリンは同化作用と異化抑制作用を合わせ持つホルモンです。
筋肉や肝臓におけるブトウ糖の取り込み促進とタンパク質合成促進と、脂肪組織における脂肪の分解抑制の作用があります。
つまり、インスリンは筋肥大に必要なホルモンですが、インスリン濃度が高い間は脂肪組織からの脂肪の溶け出しを抑制します。つまり、食後は脂肪の溶け出しが抑制されます。


グルカゴン
グルカゴンは貯蔵燃料を動員する異化ホルモンです。
脂肪細胞の脂肪分解リパーゼを活性化して、遊離脂肪酸放出を増加させます。
つまり、体脂肪は空腹に備えて蓄えられたエネルギーであり、空腹時にすい臓から分泌されるグルカゴンによって溶け出してきます。
グルカゴンが空腹時にしか分泌されないことが、ダイエットを難しくしています。

要約すると、
インスリンは筋肉、肝臓、脂肪組織がブトウ糖を取り込むのを促進するのと同時に、脂肪の分解を抑制する2つの作用を持っています。
食後数時間して、血糖値が低下すると、グルカゴン濃度が高くなります。
グルカゴンは脂肪分解リパーゼを活性化して脂肪酸を放出させます。


アドレナリン、成長ホルモン
運動をすると、副腎からアドレナリン、脳下垂体から成長ホルモンが分泌します。
アドレナリンは血圧を上げ、筋肉を俊敏にして運動の体勢を作りますが、アドレナリが脂肪組織に到達すると、脂肪分解リパーゼを活性化させ、脂肪酸を放出させます。成長ホルモンも脂肪を放出させます。
ただし、食後のインスリンが分泌されているときは、インスリンの脂肪分解の抑制作用によって抑制されます。
食前の運動と食後の運動では、結果が同じにならないのです。