食前の運動
体脂肪とは、空腹に備えて蓄えられたエネルギーなので、空腹にすると溶け出してくる仕組みになっています。
空腹になり、すい臓を流れる血液の血糖値が低下すると、グルカゴンというホルモンが分泌されますが、このグルカゴンには脂肪を溶かしだす強力な作用があるので、空腹に鳴ると体脂肪が溶け出してくるのです。


有酸素運動の前に筋トレをすると、脂肪の燃焼が高まるといわれますが、筋トレで脂肪が溶け出してくるには1時間くらいもかかりますし、グルカゴンの作用の方がはるかに強力です。
したがって、空腹時は脂肪を燃やす運動にとって最大のチャンスです。


このように書くと、ダイエットは消費カロリー次第だから、食前でも食後でも消費カロリーが同じだったら結果は同じだという人が必ずいます。
実際に、摂取カロリーと消費カロリーが同じなら、体脂肪の減量量は同じだったという実験結果があります。しかし、そんなことは当たり前です。

ダイエットはそういうことが問われているのではありません。

ダイエットで有酸素運動をすると、運動消費カロリーの1/10の蛋白質と約1/2の炭水化物の追加補給が必要です。無酸素運動では、運動消費カロリーの1/10の蛋白質とほぼ100%の炭水化物の追加補給が必要です。

筋肉が貯蔵するグリコーゲンは、本来は敵に遭遇したときに一目散に逃げるときのためのトケットブースターです。
運動でブースターのエネルギーを使ったら、大急ぎで補充しなければならないものです。だから、運動をするとお腹がすくのです。


運動をすると、お腹がすくので、どうしても摂取カロリーが増えます。
ですから、効果的なダイエットをする上で問われているのは、消費カロリーが少なく、脂肪がよく燃える運動はどんな運動かということです。

運動は食前か、食後か、どちらが脂肪がよく燃えるかということです。

この問いに対して、摂取カロリーと消費カロリーが同じなら、体脂肪の減量量は同じなどという幼稚な答えでは、答えになっていません。
ダイエットは、カロリーがマイナスだったら痩せるのですが、どうやったらマイナスを大きくできるかを考えるのが、ダイエットで重要な点です。


糖尿病患者は食後にウォーキングをします。

これは、筋肉はインスリンなしでも、血液中のブトウ糖を燃やすことができるからです。

そのため、糖尿病患者は食後の運動が薦められるのですが、その代わり、ブトウ糖が燃えている間は脂肪が燃えません。
食後の運動は糖尿病患者には必要なことですが、体脂肪を減らしたい人にとっては効率的でありません。


空腹時に運動すると、腹ペコでランニングをはじめても、運動中に副腎から分泌されるアドレナリンに血糖を上昇させる作用があるので、帰ってくる頃には、バナナ1本を食べたくらいの血糖値に上がっていて、空腹感がなくなっています。

このために、ランニング後に食事をすると、少ない量が早く満腹感がきます。ですから、ランニングをしても、摂取カロリーがあまり増えません。

この点が、効率的で我慢の少ないダイエットをする上で、たいへん重要になってきます。


運動は食前でも食後でも同じだ。むしろ、バナナ1本でも食べてから走ることをオススメしますなどと回答する人がいますが、これは普段ジョギングをしたことのない人だと思います。
食前と食後、どちらがお腹がすかないか、どちらの運動が食事量を減らせるか、一度、試して見るとよいと思います。結果はすぐに分かります。
それに、食後のランニングは、着地の衝撃が胃にどしんどしんと響いて苦しくて走れません。痩せた人なら胃下垂になると思います。


異なる運動実施時刻が脂肪燃焼に与える影響

下図は、川崎医療福祉大学で女子大生20人に、朝食前、朝食2時間後、昼食2時間後に自転車を漕いでもらって、その時間帯がもっとも脂肪がよく燃えたかを調べて結果です。このグラフでは、下方ほど脂肪が良く燃えたことを示します。

結果は、朝食前の運動がもっとも脂肪がよく燃え、かつ、運動の最初から脂肪が燃えていることを示しています。



ダイエット7
http://ci.nii.ac.jp/lognavi?name=nels&lang=jp&type=pdf&id=ART0000865571