ミュージシャンたちの共演が話題となったの江崎グリコ「みんなに笑顔を届けたい。CM。」の中でGLAYのTERUや山崎まさよしらに混じって一際目立つ風貌の男性がいるのに気付いただろうか? はたまた、先日放映された『タモリ倶楽部』「空耳アワー2013」で二階堂ふみや菊池成孔らに混じってゲスト出演した際に初めて目にしたと言う人もいるかもしれない。アフロヘアにサングラス、和服袴姿という一度見たら忘れられないその人の名は「レキシ」。すでに3枚のアルバムを発表し、現在開催中のツアー「もう~い~くつ遺跡めぐると~お正月?」も大半がSOLD OUTと快進撃中のアーティストだ。
彼のことを知らない人のために、ここで少し経歴に触れたいと思う。本名は池田貴史。もともとはハナレグミこと永積タカシが在籍したバンド「SUPER BUTTER DOG」のキーボーディストとして活動していた。2004年以降は、中村一義のバンド「100s」にも参加。ほかにも椎名林檎や星野源、スネオヘアーなど名だたるミュージシャンたちのサポートをこなす傍ら、現在では「ももいろクローバー」の妹分「私立恵比寿中学」の楽曲制作も手掛けている。
「レキシ」は、そんな池田の歴史をテーマにした楽曲を制作したいという思いから生まれたソロプロジェクト。そのため楽曲タイトルも「狩りから稲作へ」「墾田永年私財法」など日本史の教科書で見たようなタイトルがズラリ。曲のテイストもヒップホップありソウル/ファンクあり、ロックありとジャンルにとらわれない、ユニークな音楽世界を展開している。
加えてそのトークのおもしろは折り紙つき。かつて、いとうせいこう(「レキシ」では足軽先生)から「音楽業界一おもしろい男」と太鼓判を押されたほどで、そのMCを楽しみにライブに足を運ぶファンも少なくない。特に、作品に参加したアーティストに付けられた“レキシネーム”は秀逸で、サンボマスター山口隆に「田ンボマスター」と名付け『墾田永年私財法』を歌わせるとか、ちょっとほかでは考え付かないような笑いのセンスをそこここで感じることができる。
とはいえ、一見するとその姿は「変わった衣裳で、時たまおもしろいことをしゃべるイロモノミュージシャン」。類まれな演奏テクを売りにするでもなし、ユニークな世界観をことさらひけらかすでもない。一貫して“イロモノ”であろうとする。
しかし、実はそれこそが「レキシ」の狙いなのではないかと思うのだ。例えば、「姫君shake!」(斉藤和義と共作)は窮屈なお城暮らしをもてあます姫の気持ちを歌った曲だが、「名前も知らない相手に嫁ぐのはイヤ」など、J-POPらしい恋愛要素も巧みに織り込んできたりする。また、ソロプロジェクトゆえ、「レキシ」では主にボーカルをとっている池田だが、彼の真骨頂はエキサイティングなキーボードプレイ。時には鍵盤の上に乗ったりと、ステージで見せる動きはライブでは素直にカッコイイ。つまり、いかにおもしろい格好で観客の前に現れようが、歴史をネタにした絶妙な歌詞を書いていようが、これらはすべて壮大な照れ隠し。「歴史キャラ」という縛りさえも、ある意味覆面的な自由さを獲得するためのもののようにすら思えるのだ。
ヘタに見た目のインパクトが強かったり、テレビでおもしろいことを言ったりすると、本業とは別の意味で注目されてしまうことは世の常(エレカシの宮本とか)。しかし、それで音楽がないがしろになってしまうのは非常にもったいないこと。その逆に、この風貌とコンセプトで真面目に音楽ばかりやられても、それはそれで味気ない。「レキシ」には、ぜひとも音楽と笑い、両者を極めた愛すべき“イロモノ” としての道を突き進んでいってほしいと切に願う。
(この記事は音楽(リアルサウンド)から引用させて頂きました)
