4-11
1
疎開先の村の小学校から
都会のマンモス校に転校して
まだ一年四、五か月にしかならない私が
クラスのリーダー的存在だったO(M)君を差し置いて
卒業式で送辞を読む役に抜擢された、その後も
私をライバル視するどころか
持ち前の鷹揚さで
友情を育み育ててくれたO(M)君
遠い異郷の地での
大学生活の第一歩でつまづいてから
なすすべもなく
友情の道に雑草を生やし続けてしまった私が
デビュー作を出版した、その機会に
四十年ぶりに電話で話したときも
昔に変わらぬ鷹揚さで
相手をしてくれたO(M)君
同君のことを思い出すと、私は
天よ
十六年前に六十三歳で急死したO(M)君の御霊に
永遠の安らぎを与え給え
と祈らずにはいられないのです
2
下宿探しでヘマをして
行き場がなくなった荷物を
知り合いになったばかりの
O(T)君の下宿に預かってもらったり
学費を稼ぐために
学業そっちのけで
アルバイトに憂き身をやつしたり
宅浪で一期校に合格したからと
変に思い上がって
大学を休学同然に休み続けたり
果ては
心酔していた有名作家にかぶれて
バラミン自殺を図ったり
同棲生活を企んだりした挙句
下宿を出て、住所不定のような暮らしをしていた
――そんな私を見るに見かねて
新しく借りた三畳ひと間の狭い下宿に
企みを決行するまで
しばらくの間かくまってくれたO(T)君
同君のことを思い出すと、私は
天よ
五十年前に二十九歳で若死にしたO(T)君の御霊に
永遠の安らぎを与え給え
と祈らずにはいられないのです
3
奥さんから
喪中はがきが届いたのに驚いて
年明け早々に
友人と連れ立って
K君宅に弔問に訪れたとき
年端のいかない娘さんたちを
目の当たりにしたとたん
私をして、思わず
むせび泣きさせてしまったK君
その独身時代には
私の方が年上ではあったけれども
お互い
気が合った上に
飲み友達でもあり
文学仲間でもあるしするので
私の家に、よく
泊りがけで遊びに来たK君
同君のことを思い出すと、私は
天よ
三十年前に四十三歳で突然死したK君の御霊に
永遠の安らぎを与え給え
と祈らずにはいられないのです


