それは人通りの少ない夜の一本道での出来事だった
私は帰宅の真っ只中で、自転車のペダルをしきりにこいでいた
月の明かりに照らされながら、周りに生い茂る草木が音をたてながら靡いていた
その音はいつもより騒がしく聞こえた
向こう側から、紅色の洋服を着た老婆が杖をつきながら歩いてきた
"こんな夜道にあぶねーな"
道は狭かった
慎重に老婆をかわそうとした
気のせいか、すれ違いざまに老婆と目があった
笑っているようにも見えた
あまり気分がいいものではなかったから、早くこの場を去ろうとした
一本道を突き進む
すこし先に人影が見えてきた
いつもはついぞ人が通らない路地であるから、こんな日もあるのかと思いながら人影と距離を縮めていった
少しずつ人影がはっきりしてくる
ハッとなった
私はいつの間にかブレーキをかけて止まっていた
その人影は杖をついていた
紅色の洋服を着ていた
あの老婆だった
今日体験した実話です