『孤独のグルメ』 シーズン9 第1話

   

あぁ。とんかつ屋の豚汁が美味しいと、幸せが2倍になる。

 

『美味しいです。』

『いつもアリガトね。ねえ、就活はウマくいってる?』

 

『実は、明日が第一希望の会社で気合、入れに来たんです。』

『就活にカツ。ね!』 『はい。』

 

このカツを食えば気合も入る。力も出る。生きる勇気が湧いてくる。

   

食っても食ってもまだ食いたい肉の塊が、

 

衣をかぶってココにいる。  『いらっしゃいませ。こちらへどうぞ。』

 

『あ、32度あります?』『ごめんなさぁい。もう出ちゃったのよ。』

 

『じゃあ、ひれのたっぷりで。』『はい!かしこまりました。』

 

32度?! 何の話だ?!

  

ザクザクの衣がなんとも食べ心地よくてあっという間に消えた。

『はい。』『すみません。』

  

みんな、あの苦しい坂を登り鮭のごとく這い上がって食べに来たのか。

 

その気持ちも、今は分かる。

  

うん。かつの合間になすで和む俺。渋いかも。

 

『はい!お待たせしました。』

ふっふっふっふ。クリコロ好きとしては見逃せん。

 

なにコレ?!初めて見るタイプ。

 

でっかい具がゴロゴロ。 まずはプレーンで。

 

え! これは?!

 

タコ?! あ、イカも?!

 

クリームのトロトロと、イカ・タコのコリコリ。

シーフードグラタンを揚げたような。う~ん、でも美味い。

一際、贅沢な一品でございます。

 

う~ん・・・。俺のシーフード魂に火がついたぞ。

 

『すみません。』『はい。』『エビフライの単品って頼めますか?』

『3本あるんですけどそれだと多いですよね。』『はぁ。』

 

『1本だけって大丈夫かしら?』『今日は大丈夫だよ。』

『ありがとうございます。』

   

『エビフライです。』

 

おっ!タルタル! ラッキー!

   

これはいい!! これはヤバい!!

 

エビ反る美味さ。弾力プリプリで食べ応え満点。

 

タルタリスト五郎、大喜び。タルタル、残すまじ。

  

うん!完璧だ!見事なエビ1本勝ちだ!

  

ひれかつ御膳。1時間前の俺はこんな美味しい未来を

知らないで生きていた。

最後はソース、ドバドバで攻めましょうぞ。

  

う~ん。やっぱり普通のひれと違う。

目覚めるとはこの感覚か。うん、分かる。

 

う~ん。キャベツが心底ありがたい。

 

とんかつにキャベツ千切りを合わせた人。

ノーベル添え物賞だ。

 

ヘルシー志向がなんだ!

こうして揚げ物をモリモリ食べられる事が俺の健康の証。

 

この美味さは明日の元気の予告編だ。

 

おぉ~っ!たっぷりひれかつ! すげぇや。

 

この素晴らしき揚げ物物語もエンディングを迎えようとしている。

   

坂の上のとんかつ屋。何か文学のようだ。

チヨダヒデノスケ。2021年度、日本満腹文学賞受賞。

 

全部、美味かった。

 

『ごちそうさまでしたぁ。』

 

『お待たせしましたぁ。32℃豚ロースカツです。』

 

『真ん中の辺りレアで揚がってますので自家製の燻製塩が

よろしいかと思います。脂身にはライムを絞っていただくと

脂身と非常に合います。最初は是非、塩で召し上がってみて

頂いて後はお好みでどうぞ。』『ありがとうございます。』

 

ほぉ~・・・。アレかぁ。とんかつの道も深く果てしない。

 

はぁ~・・・。あの顔が何もかも表している。説明は要らない。

 

『ありがとうございましたぁ。』あれだけ揚げ物を食って、

 

胃袋に負担感ゼロ。なんて店だ。