2024年3月13日

両親が面会にやって来た。

親父は今年で81、お袋は76、車を運転するのもやっとの歳や距離にもかかわらず、こんな愚息の為に心配してくれたのだ。

二人とも平静を保ちつつも、ショックを受けている事は容易に判る。

俺も照れを隠しつつ、坦々と現状を話す。

親父:「まぁなっちまっもんはしゃぁない、兎に角お前は現代の医学を信じて治療に専念しろ!」

お袋:「こんな身体に産んでごめんね…でもお前なら大丈夫だから!私達もそんなに永くはないけどお前から骨拾って貰わなきゃなんないんだからね!子供達の為にも諦めるんじゃないよ!」

…若い頃は親父とは毎日のように殴り合いの喧嘩ばかり、お袋の言葉なんて一切耳を貸さず好き放題ヤンチャしたような息子でも、やはり永遠に親子なんだなぁ…

俺:「なぁ親父、俺は確かにバカ息子だけどよぉ、命の炎だけは親父譲りで発炎筒(助手席側に付いてる明るくて強力な炎を出す赤い筒のあれ)並みなんだよ!親父みたいな整備士の息子らしくな」

親父:「このバカ野郎!まぁそんだけ減らず口叩けりゃ心配無ぇな(笑)」

お袋:「相変わらずだねぇ(笑)」


続いて妻が次女を連れて面会にやって来た。

まだ幼い小学一年生、突然パパが家から居なくなり、こんな姿で会う事がどれだけ心に大きな衝撃を与えてるのだろうか…

ニコニコしながらも円らな瞳が何処か物悲しげに映ってしまう。

頭を撫で、「元気か?寂しい思いさせてごめんな!宿題とか終わったか?」

本当は抱き締めてやりたかった…他人目なんて気にしてられなかった。

普段「パパ一緒にお風呂入ろうよ」と誘われるのを、仕事疲れでスルーしてしまった事をどれだけ後悔したことか…

返すがえすも、本当に俺はバカ親父だ…


15分の面会時間はあっという間に過ぎ、見送りに玄関階まで一緒に

此処の病院にはコーヒースタンドがあり、子供達は此処で飲み物を飲むのが大好きだ。

次女の大好きなココア、妻の好きなカフェラテを買い、俺も烏龍茶(治療中は水か無糖の茶しか飲めない)を買ってロビーの椅子に並んで今日の別れを惜しむ。

小さな手で美味しそうにココアを飲む娘、絶対に早期にお前の元に帰るからな!

熱いものが込み上げてくる


忘れないように自分に言い聞かせる。

「俺の命の炎は発炎筒並みだ!絶対に消せねぇぞ!」