2024年3月13日

朝一番で「癌サポートセンター」を訪れる。

ここは癌治療に関するあらゆる悩みや相談事を引き受けて、専門の看護師さんや社会福祉士さんが相談に乗ってくれる。


俺はとても口下手なので、事前に自分の考えをまとめておいた。

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(希望すること)

・兎に角俺は生きたい!諦めたくない!親や妻子を泣かせたくない

→子供がまだ小さい、まだまだやり残したことが沢山ある、老親も健在

・皆様の力を借りてでも、どんな方法でも治したい

→多少の負担(抗がん剤の副作用)やリスクは受け入れる覚悟がある。

・生命保険募集人として、決してドラマや作り話でないこの経験を仕事仲間に伝え、健康の大切さや保障の大切さを伝えて行きたい

→だから今死ぬわけにもいかない


(治療全般に関すること)

・可能な限り家族と過ごしたく、仕事も続けたいと考えているので通院で出来る治療は通院で行いたい

→入院は最小限としたい

・がん保険および生命保険は加入済み、金銭的負担なら多少受け入れられる。

(仕事・社会復帰)

可能な限り早期に復帰したい、バイクを趣味としているので乗り続けたい


(大切なこと、決意)

先々のことばかり考えても仕方ないので、兎に角「今↓↓ここ」で自分のやるべきことを精一杯行う

→この病院をはじめ、最先端の技術と医学で癌は長く付き合うものとなっている、周囲を信じてみんなのサポートを信じて借りつつ、自分は治療に専念する


拙い文章ではあるが、紙に書いて相談員に提出してみた。

…しかし

…だがしかし

本当にこの考えは正しいのだろうか?

受け入れて貰えるものなのだろうか?

希望は本当に叶うのだろうか?

…不安も同時に横切っていく


相談員が相談室に案内してくれたので対面で座り、挨拶やアイスブレーク的なやり取りの後、恐る恐る事前にまとめた考えを出してみる。

相談員は一通り目を通して何度も頷き

「素晴らしいじゃないですか!」

予想外の反応に呆気にとられる俺…

…しかし、本当に私の考えは通るようなものなのでしょうか?

「いえいえ、ここに来る皆さんはまるで遺言でも残しに来るような方ばかりです。しかし貴方はここまで力強い決心を紙にまで纏めて持って来られたじゃないですか!それが一番大切なことなんですよ!」

「誰だって簡単に死にたくはありません、医師だって説明するときは淡々と現実を説明はしますが、我々どの医療スタッフだってプロとして患者さんの意思を尊重しつつ全脳全技術を駆使して治療します!」

「だから安心して下さい!辛いときは何時でもここに来て下さい!」


大の男なのに人前で号泣したのは久方ぶりだった。

話聴いてくれて、拙い自分の考えを受け止めてくれることがこんなに有り難いとは…

「時々、妻と話しに来て良いですか?」

「勿論ですよ!是非奥様とも顔だして下さい!」


気持ちの整理が付くとこんなに気が楽になるものなんだなぁ~


病室に戻って、消化器内科の主治医と外科の主治医が回診にやって来た

「早速明日から抗がん剤治療を開始しますので明日外科の病棟にお引っ越しです」

千里の長旅の一歩を踏み出した俺


よし!頑張るぞ!戦闘開始!