1.概要
今晩はナンパに出る予定だった。
最近昼夜のダブルワークが忙しく、中々出ることが出来ていない。前回掴んだ感覚がまだ残っているうちに次に繋げたいのだが、焦りだけが募っていた。

しかしそんな時に限って会社のお偉方から連絡が入る。
何でも、歓迎会がてら東京の遊びを教えてやるという。
余計な事をしてくれるなと思ったが、東京で成功している一般的なサラリーマンが、どんな遊びをしているのか少し興味があったので、快く返事をすることにした。


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2時間後、僕は六本木の高級クラブにいた。
隣には美人ホステス。
向かいの席にはお偉方とそのお気に入り。
店内にはずらりと夜の女達が並び、指名を待っているようだった。
流石は高級クラブとあって、全員レベルが高い。
客層は金を持ってそうなギラついたオッサン、
その歳でまだ性欲あんのかと驚くようなジジイ。
両手に女を抱えて楽しそうに酒を飲んでいる。

イメージ通りの光景過ぎて、僕はいささか戸惑いを隠せなかった。

隣のホステスが色を使って酒を勧めてくる。
営業トーク。営業スマイル。ボディタッチ。

こんな女に呑まれてたまるか。
僕は適当にかわしながらも、目は逸らさないように勤めた。

お金を持っていないので、アフターは望めない。
相手を魅了するテクニックがあればそんなのは関係ないのだが、今の僕ではまだ全然足りない。
ならば割り切って、この女にはアポの際の練習台になってもらおう。

しかし向かいには気心知れたお偉方がいる。
距離を詰めていくトークも非常にやり辛い。

そうこうしているうちに、お偉方が話しかけてきた。

「翼、楽しんでるようだな」
「俺たちぐらいの歳になるとな、20歳の女の子とこうやって話すのが最高に楽しいんだ。
最近はセクハラだのパワハラだのうるさくて職場の子は相手してくれないからな。」


なるほど、確かにそういう時代だ。
でも僕は、あなたと同じくらいの歳で、20歳のもっと綺麗な女の子を抱きまくっている人を知っている。
こんなクラブに高いお金を払って上っ面の営業トークにデレデレするんじゃなくて、
普通のカフェで上手に距離を詰めて、そのままラブホに連れて行ってしまう人を知っている。

この両者には、絶望的な差がある。

女に搾取される男と、女を搾取する男。


お偉方。
僕は絶対に、あなたみたいになりたくない。

隣でわざとらしく笑っているホステス、
僕は絶対に、お前みたいな女を追わせる男になる。

そんな事を考えながら、
僕はこの空間でまだ一人、拗ねている事しか出来なかった。

2.気付き
(飛び込み営業や、アルバイトやパートの子とのトークでの気付き)

・女性とのトークは、くだらない話が基本。
茶番劇のようなリアクションもウケる。

・逆に本音の話はしない方が良い。相手の本音に対して共感するのは良いが、自分の本音を話しても相手は理解しないし、共感もしない。
自分への理解を、女性に対して求めない。

・真心や誠実さが伝わるなど、考えない方が良い。心はいつも冷めた所に置いておいて、口先で相手をどうコントロール出来るか試行錯誤する。