こんにちは

 

前回の記事で曜変天目茶碗を鑑賞したことを書きましたが、もう1点印象的な展示品があったので紹介します。

 

 

国宝 玄奘三蔵絵

 

中国・唐の時代、高僧の玄奘三蔵は単身で長安からインドへ行き仏教の修行を修めて中国に多くの経典を持ち帰る。経典は古代インド語のサンスクリットで書かれているので、漢訳する訳経事業に力を注いだ。

 

漢訳したお経は仏教として日本に伝わり「般若心経」と呼ばれて日常に溶け込んでいる。

 

この作品は玄奘三蔵の生涯を鎌倉時代(14世紀)の日本の5人の絵師が分担して描いて12巻にしたもので、もとは奈良の興福寺の子院の「大乗院」の秘蔵品でしたが明治時代に入り廃仏棄釈の中で民間に流出、現在は12巻そろって藤田美術館が所蔵。

 

流出前は大僧正が代替わりした時や、皇族の閲覧申請のような特別な時のみ広げていたので、状態はすこぶる良い。

 

今回、鑑賞したのは第2巻、第3巻でした。玄奘がインドへ旅をしているあたり。

 

 

第2巻

 

 

右の馬に乗っているのが玄奘。妖怪?魔物?が待ち伏せしています。

14世紀に描かれたものとは思えないほど絵の具が鮮やかです。

 

 

 

第3巻

 

 

旅の途中で亀茲国(現在のウイグル自治区の一部)で歓迎を受け、高僧と議論を交わしているところ。

 

 

 

ちなみに12巻、玄奘が若かろうが歳をとっていようが、赤い袈裟を身に着けて描かれているのでどこに居ても玄奘と分かるようになっているそうだ。

 

 
 
よくぞ破壊されることもなく海外へ流出するのを止めてくださった。
 
私財を投じて藤田美術館のコレクションを完成させた明治時代に活躍した実業家、藤田傳三郎さんと息子の平太郎さん、徳次郎さんには感謝しかない。