ロバ-ト・チェンバ-スという開発学では
有名な研究者がいるそうですが
彼の言葉にはとても力があります。
「開発は良い変化’Good Change’のことである。」
と言い換えたそうなのですが
このことはただわかりやすく言い換えた
という次元を超えて大変深い意味を持っています。
まず何が「Change」するのか
そして何が「Good」と呼べるのか
そのことが大前提で必要となります。
チェンバ-スはまず開発のプランナ-を
Upperと呼び、現地の人をLowerと呼びますが
これは彼の本意ではなく便宜上のポジションなのです。
先進諸国のプランナ-が上から押し付ける
一方的な開発プランに強く反対し、
現地の人たちの声を聞き、現地の人たちが
主体的に開発過程に参加する「参加型アプロ-チ」が
最も重要であるというのが彼の主張だからです。
「座って問いかけてそしてよく聞くこと
Sitting, Asking and Listening」
これが「参加型アプロ-チ」の基本姿勢です。
つまり彼にとって「Change」というのは
従来の開発のベクトルを変えることだとも言えます。
彼の著書
「開発の思想と行動 Ideas for Development」
の中では「見方 View」と「意思 Will」が変わることだと
述べていますが、それは客観的に社会を見た時に
その開発プロジェクトがどうであるか、見方を変えることで
そのベクトル≒方向性(意思)が変わってくるということを
表しているように思えます。
また、著書のタイトル訳にもなっているように、
開発プランナー自身、現地の住民自身の
「思想 Idea」と「行動 Action」が
「現地の住民主導」に変わることが
もっとも現実的に求められている「Change」
だと言えます。
先進国の都合で、先進国の物差しで
「ここには○○がない」「○○があれば便利なはず」
と勝手に開発を進めるのは一方的な応急処置にすぎません。
「何もない」という発想から
「素晴らしいものが本来あるはず」という発想の転換が
現地の人の立場に立って開発を進める者の
正しい思想だと言います。
状態Conditions、観念Ideologies、認識Perceptions、
慣例Practicies、優先順位Priorities
これらの既成概念を取っ払い、すべての原因と結果を
考慮することが必要だということです。
彼らは彼らなりに生命の循環を保ってきたのですから
確かにそこには何かがあるはずなのです。
現地の人たちが持つサイクルをサポ-トすることで
サイクルそのものを力ずくで変えずに
サイクルをエンパワ-することができるはずなのです。
(Power to Empower)
そして彼ら(現地人)自身も、自らを分析し
自分たちの現実を共有することで
どうしたらいいか主体的に考えるようになり
主体的に参加できるのだと言います。
この手法は参加型という意味で
PRA「Participatory Reflection Action」とも呼ばれます。
また、どのような状態が「Good」であるかは明言されていませんが
少なくとも「現地の人」のとって「Good」である必要があります。
また、よい状態「Good」そのものではなく、そこに至る行為
よりよい行為「Do better」も掲げており、
政策Policies、事業計画Programmes、企画Projects、個人Personal
のすべてをよりよくすること、またそのために
私たちはどのような思想を持ち、how ideas are formed
どのように考え、how we think
どのように変わり、 how we change
何をして what we do
何をしないのか what we do not do
に意識的になる必要があるのです。
ロバ-ト・チェンバ-スが
「開発の思想と行動」で示している
「Good Change」とは開発学にとどまらず、多くの分野を巻きこんだ
ある種、挑戦的な、ただし、領域をまたがる根本的な考え方と
言うことができるでしょう。
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