■はじめに:見過ごされ続ける問題
日本社会において、障害者や多様な才能を持つ人々が不当な待遇を受け続けている。不当解雇、過小評価、差別的な給与待遇は繰り返され、その結果として生活保護に転落する人々が後を絶たない。
今から50年前も、10年前も、そして2025年の今も—この問題は解決されていない。なぜだろうか?
■第1部:根本的な構造的問題
企業利益中心主義が人を選別する
日本企業は長らく「完全性」「均一性」を重視してきた。多くの企業は、障害者や非定型的な才能を持つ人々を「生産性の低い存在」として認識している。この認識は根拠が薄弱にもかかわらず、深く根付いている。
結果として:
- 採用段階で障害者が理由なく落とされる
- 配置転換で不利な配置を強要される
- 昇進・昇給から意図的に外される
法律があっても運用が曖昧
障害者雇用促進法、障害者差別禁止法など、一見強力な法律が存在する。しかし現実では:
- 違反企業に対する罰則は軽い
- 監視体制が不十分
- 企業内での相談制度は形骸化していることが多い
■第2部:個人の問題ではなく「構造」の問題
「本人が努力すれば」という幻想
世間一般には「障害があっても頑張れば成功できる」という美談があふれている。しかしこの考え方は問題を隠蔽する。本当の問題は:
- 評価基準そのものが差別的
- 必要な支援体制が欠落
- 社会的構造が不平等に設計されている
個人の努力で乗り越えられない「構造」が存在するのだ。
多様性を受け入れないカルチャー
日本企業文化において「誰もが同じペースで、同じやり方で働く」という前提がある。これは:
- 在宅勤務や勤務時間の柔軟化が難しい企業が多い
- コミュニケーション能力の多様性が認識されない
- 異なる思考プロセスが「効率が悪い」と判断される
■第3部:不当解雇と生活保護転落の連鎖
労働市場の壁の高さ
一度解雇や離職を経験すると、障害者や多様な才能を持つ人は新しい職を得ることが極めて困難になる。理由は:
- 履歴書の空白期間が不利に
- 前職での離職理由が誤解される
- 再スタートの支援体制が限定的
結果、生活保護に転落する。
生活保護制度の逆説
一見すると、生活保護は「セーフティネット」として機能しているように見える。しかし:
- 受給申請のハードルは高い
- 給付額は最低限度(実質的には貧困)
- 就職活動への圧力が強く、精神的ストレスが大きい
生活保護自体が「本来あるべき社会的包含」の代替にはなっていない。
■第4部:改善が進まない本当の理由
経済的インセンティブの欠落
企業にとって、障害者や多様性の受け入れは「コスト」として認識される。
- 配慮にかかる経費
- 業務システム改善の投資
- 管理・監督の手間
これらが全てコストと見なされ、長期的な社会的利益が考慮されない。
社会全体の「無関心」
多くの恵まれた立場の人々は、この問題に直面していない。そのため:
- 改革への政治的圧力が弱い
- メディアも大きく報道しない
- 国民的議論が深まらない
■第5部:視点の転換が必要
「多様性は強み」という認識の欠如
先進国の先例を見ると、多様な人材を活かす企業は、実は競争力が高い。しかし日本では:
- これが企業経営層に浸透していない
- 短期的利益のみが優先される
- 長期的社会投資の視点が弱い
制度の抜本的改革が不可欠
必要なのは:
1. 障害者差別禁止法の罰則強化
2. 企業内相談機関の独立性確保
3. 労働裁判の迅速化と罰金大幅引き上げ
4. 生活保護から就労への段階的支援の充実
5. ダイバーシティ経営を評価する仕組み
■終わりに:繰り返されることは必然ではない
不当解雇と生活保護転落が繰り返されるのは、「社会がそう選択しているから」に他ならない。
「仕方ない」「個人の問題」という言い訳の背後には、構造的な問題から目を背ける社会的な合意が存在する。
しかし、これは変えられる。必要なのは:
- 根本的な法制度改革
- 企業文化の転換
- 社会全体での価値観の見直し
障害者や多様な才能を持つ人々が正当に評価され、尊厳を持って働ける社会—それは技術的に十分実現可能だ。
問題は「できない」ではなく「やらない」ことなのである。