死ぬことが怖い



死ぬことが

怖くなること
ないですか

死ぬこと

昨日まで
考えていたこと
夢見ていた未来

それは来週の予定
この夏の旅行

予約した夕食が
消えてしまう

大好きだった服や靴
お気に入りの本や音楽も
楽しめなくなる

病室で
眺めていた景色はそのまま
灰色に残され
わたしは

あなたは
消えてしまう

毎日抱いていた猫も
毎朝水をあげていた鉢植えも
触れない

死んでしまうこと
それは
当たり前のことが
できなくなること

ご飯もとげなくて
野菜も洗えない

天ぷらも揚げられなくて
お寿司も食べられない

お母さんに
電話もできなくて
おはようも
言えない

死んでしまうと
大好きな人から
わたしが見えない

もう喧嘩も
仲直りもできない

死ぬことが怖い

愛する人が死ぬことも怖い

なぜなら
繋がっている証拠が見えないから

死んでしまったら
どんなに想っても
思い出しても
相槌が打てない

死ぬことは
これからも怖い
この先も
ずっと

その日がきたら
人間の五感でわかる
愛とはさよなら
臭覚も
触覚も
味覚も
視覚も
聴覚も使えない

愛とは
なにか

死を超えて
なお在るもの

なにも見えなくても
触れなくても

在るの?

そこに在るもの

人間でなくなっても
そこに在るもの

お互いに人間でも
草でも
木でも
水でも
土でも
なくなっても
在るもの

この
なにかに

死ぬことの恐怖を
放とう

ただ委ねよう

いつか
なにも見えなくなっても

呼応するものたちが
いつも
愛で
繋がっていることを

心に描こう