小学校の低中学年の頃の話。もう20年近く昔の話。
親に渡された教材費の1000円。確かノートとかコンパスとか買うために渡されてたと
思うんだよね。当時の俺としてはスゲー大金。もち歩くのも怖かったのを覚えてる。
親にお釣りで飲み物でも買って良いよって言われてたから小学生の俺はその
千円札でまずジュース飲もうと思ったわけね。
たぶんカルピスソーダとか飲みたかったんだと思う。
それで自動販売機にお札を入れたまでは良かったんだけど、その千円札が
すごくくたびれたお札で真ん中のところが少し破れてたんだよね。
案の定、自販機に詰まっちゃったんだよね。
返却レバーの操作やっても全然お金出てこないの。
何度も何度も返却のレバーを操作しても反応がないんだよね。すげー焦っった。
なんせまだ教材は何も買ってないしその時の俺にしちゃ大金だったからね。
親にも相当叱られるのは目に見えてるし。
どうにかしなきゃなって思ってテンパって半泣きになっってたんだと思う。
そしたらね、お札のの投入口からさっき入れた1000円札が少し見えたんだよね。
頑張れば子供の細い指で端っこをやっとつかめるくらいの所に。
もうこれは力ずくで引っ張り出すしかないって思ったね。
そのあとかなり時間は掛ったけど何回か失敗してやっとお札の端っこをつかむことに
成功したんだよね。あとはひっぱるだけ。神様はやっぱりいるって思ったね、その時は。
で実際に引っ張りだしてみたら、ビリっっていう短い乾いた音とともに半分に破れた
1000円札が出てきたんだよね。
親にもらった大切な大金の1000円札が半分しかなくなってしまって、しかも教材も
なにも買えてなかったからもう呆然。たぶん一人泣いてたんだよね。
そうしたらそれに異変を感じたおじさんが来てどうしたんだって聞いてきたんだよね。
俺は泣く泣くその半分になった1000円札を見せたんだよね。お金が詰まったとか、
教材が買えなくなってしまったとか親に怒られるとか云々言ったのを微かに覚え
てる。そしたらそのおじさんがしばらく考えた後、言ったんだよね。
『もし良かったら君のその半分だけになった1000円と
おじさんのこの1000円札を交換してくれないか』って。
結局俺は交換してもらって無事に教材を買うことができたんだよね。
後ろめたい気持ちはあったものの親にもばれず叱られることもなかった。
あとあと知ったのは半分になったお札には半分の価値(500円)しかないん
だってね。たぶんあのおじさんは知ってって交換してくれたんだなって。
見ず知らずの子なのにね。俺はもちろんそのおじさんの顔も覚えてないし
場所も津田沼ってことしか覚えてない。だからそのおじさんに自身には
恩返しはできないけど、俺に出来るのはいつか困っている人がいたら
少しぐらい自分が犠牲になったとしても進んで他人を助けることなのかなって。
なかなか自分の理想の姿とは程遠い今だけど人にだけは優しくありたい。
自分の思うように物事とか行かない時こそ人に親切でありたい。
あの時の1000円札が詰まって本当に良かったと思う。