インプラントはヤバい⁉元歯科技工士だから知っているうわさの真相について | dental-techniqueのブログ

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元歯科技工士が自らの経験を踏まえて、歯科関係のお話を綴っています。

今回は僕が歯科技工士の仕事をしていたとき、実際に歯科医院さんから受けた仕事の中で「インプラント埋入の失敗例」を紹介したいと思います。

 

みなさんは、インプラントと聞くとどんなイメージがありますか?

 

まず誰もが「費用が高い」ということを思い浮かべるのではないでしょうか。

 

インターネットで検索しても、キーワードとして上がってくるのは確かに「インプラント」「費用」と出てきます。

 

しかしそれ以外にも、「後悔しかない」「やめたほうがいい」とも出てくるんです。

 

これは一体どういうことかというと、インプラントを埋入するのには外科手術が必要になり、その際に失敗されたケースが多いことが原因だと思われます。

 

僕が歯科技工士をしていたのは10年前のことですので、現在は当時と比べて技術力もあがっているのでしょうが、未だに後悔されている方が多いようです。

 

インプラントは歯科治療でも報酬が高く、歯科技工士からしてもみんなが欲しがる花形のお仕事です。

 

それ故に、まだ知識も技術も未熟なままで治療にあたってしまうことも多々あるようです。

 

そんな中で今回は、歯科医院の先生から「この症例は僕の失敗です、今回だけ何とかして上部構造を作ってほしい」と言われた、実際にあったインプラント埋入の失敗例を紹介していきます。

 

 

インプラントについての予備知識

 

まずはインプラントとは何を指すのかと、その構造についてを簡単に記します。

 

これを理解しておくことで、後から紹介する症例がどのようにヤバいのかがよく分かるようになると思います。

 

 

インプラントとは

 

インプラントとは、人工の材料や部品を体に入れることの総称です。

 

その構造としては、

 

  • 人工歯根(フィクスチャー)
  • アバットメント
  • 人工歯冠(補綴物)
 
この3つが最終的に一体となることで、きちんと噛めるように作られています。

 

 

 

インプラントの作成手順と各作業者

 

先ほど紹介したインプラントの構造の、どれを誰がどのように作業していくのかについてを紹介します。

 

  1. 人工歯根埋入(歯医者さん)
  2. 支台「アバットメント」作成(歯科技工士)
  3. 人工歯冠(歯科技工士)
 
更に分かりやすいよう、インプラントの埋入手順の動画も張っておくのでよかったらご覧ください。

 

出典:YouTube

 

 

インプラント成功への運命の分かれ道

 

インプラントが成功するための重要なポイントとしては、この「人工歯根の埋入された位置と向き」にあります。

 

動画にあるように、隣在する歯に対して支台(アバットメント)の向きが同じ方向を向いていないと、当然その上に作る人工歯冠の着脱は困難なものとなってしまいます。

 

もしも、人工歯根が隣同士の歯に対して沿った角度ではなく、単独で傾いて埋入されてしまっていたとしても、ある程度の角度には、その上に作る支台(アバットメント)を人工歯冠が着脱できるように作ることはできます。

 

しかしそれにも限界というものがあるんです。

 

僕が担当したケースは、その許容範囲を軽く超えるような角度で人工歯根が埋入されていました。

 

結果としてこちらも仕事ですので、何とかして無理やり作りましたが、その後どうなったかについては知りません。

 

おそらく人工歯根に対して変に無理な負担がかかっていることと思います。

 

その結果、もし埋入された人工歯根がグラグラするなどの不具合が出てきてしまったような場合は、インプラントの再治療が必要となります。

 

では、そもそもなぜそんなことになったのか。

 

考えられる原因は、おそらく人工歯根を埋入するときに必要な「サージカルガイド」という、きちんとした位置に埋入できるようにガイドしてくれるものを使わずに、フリーハンドで埋入を行ったものと思われます。

 

そうならないためにも、はじめからどうすることが良かったのかをお伝えします。

 

 

インプラント埋入で必要なもの

 

インプラントは1本あたり4~50万ほどかかる保険適用外の高額治療です。

 

だからこそ少しでも安くしようとするのは悪いことではありませんが、インプラント埋入時に必ずこれだけは使用してもらうようにしてください。

 

  • サージカルガイド

 

サージカルガイドどは、インプラントをCTならびにコンピューターシミュレーションした位置に入れるための「外科用のガイド」のことです。

 

インプラント埋入をするにあたって、これを使いながら埋入すれば正しい位置に埋入することができます。
 

出典:シンタニインプラント外科

 

先ほどの動画同様に、1歯欠損で中間欠損(歯が3本あるうち、真ん中の歯だけがない状態)であればサージカルガイドを使わず、フリーハンドでインプラントを埋入する歯医者さんが多いのも事実ですが、それは後のことを考えてもやめた方がいいと思います。

 

その理由は、少しでもちゃんとした位置に埋入されていないと、上部構造を作る際に歯科技工士が大変困難な作業を余儀なくされるからです。

 

例えば前歯部を作るケースで、

 

 

このような形で人工歯根を埋入し、支台(アバットメント)を作製したとします。

 

そして次に人工歯冠を作ろうとしたとき、十分なスペースが確保できていないと1本だけ出っ歯を作らなければならなくなります。

 

そうなれば、高いお金をかけて何してくれとんねん!と、なることでしょう。

 

しかし変な埋入位置と角度で埋入されてしまっていては、こちらとしてもどうすることもできないのです。

 

だからこそたった1本のインプラント埋入にでも、サージカルガイドは必要なのです。

 

実際にサージカルガイドを使ったインプラント埋入の動画をあげておきます。

 

フリーハンドではなく、ガイドとなるものがあっての埋入手術の安全性が分かるかと思います。

 

出典:YouTube

 

まとめ

 

インプラント埋入時に必ずといっていいほど必要なものは、

 

  • サージカルガイド
 
1歯欠損であったとしても、後のことを考えたらフリーハンドでの埋入手術はオススメできません。
 
それをフリーハンドで行おうとする歯科医院を間違いだとする歯医者さんもあります。(ホームページに書いてありました)
 
このあたりの認識の違いが、後のインプラントの訴訟問題等へとつながる原因の一つでもあるように思います。
 
サージカルガイド作製は決して安くはありませんが、インプラントは一生もののため、ケチるとろくなことになりません。
 

是非ともインプラントをお考えの方は、歯科医院の先生とよく相談をされて、「そんなの大丈夫、気にしすぎだよ」という歯科医院には気をつけてください。

 

では、また。