すっかり昨日となったが、16日は大学時代にお世話になった原ゆうや氏を主宰とし、かつて俺も何度か客演させていただいた劇団YAX直線第0回公演vol.12『トム・ソーヤのつくりかた』を観に、阿佐ヶ谷アートスペースプロットへ。
先の記事でも書いたのだが、阿佐ヶ谷は俺にとって思い出深い場所。こんにちはシアターという演劇サークルに所属してた時も、YAX直線の旗揚げ公演でもこの阿佐ヶ谷の小劇場、アートスペースプロットをよく使わせてもらってた。
まあ思い出語るのはここまでにして、芝居の感想に移ろう。
<説明>
あの「自称・関東一のインチキ劇団」が贈る、約一年ぶりの本公演!
誰もが知ってる、勇気りんりん冒険わくわくな男の子トム・ソーヤ!
…でも、意外と知らない『トム・ソーヤの冒険』って、どんなお話?
あの文豪ヘミングウェイが「アメリカ文学史上の最高傑作」と評した、マーク・トウェイン作『トム・ソーヤの冒険』
その胸わくわくの冒険物語から、トム・ソーヤがいなくなったら??
どうする?どうなる?
どうやって進めてく?
意外と知らない『トム・ソーヤの冒険』がどんなお話か。
そしてトム・ソーヤがいなくなってしまった『トム・ソーヤの冒険』はどうやって進めていくのか。
両方の答えは、この公演にしかない。
そう『トム・ソーヤのつくりかた』にしかない!
インチキ劇団の一方で、「弱者になりきれない弱者」を優しく鋭く描き、社会派を自認し、熱くウザく言葉を連ねる、そして「芝居は世界を救わない。ただ、誰かを救う。」と信じて疑わないYAX直線が描く、トム・ソーヤの世界。
行ったことない。川と言えば隅田川くらいしか思い付かないインドア系どもが、遥かなるミシシッピーに思いを馳せて。
乞うご期待!
<あらすじ>
んまー恐れながら要約させてもらうと…
「トム・ソーヤの冒険」の作者、マーク・トゥエインが未来からの刺客によって、頭の中にあったトム・ソーヤのイメージを奪われてしまう。
それを彼の手に取り戻すために、同じく未来からやってきた天才脳科学者「富田林万作」率いるメンバーが、トム・ソーヤがそこにいるかのように「トム・ソーヤの冒険」を演じていき、マーク・トゥエインの「トム・ソーヤの冒険」執筆を手助けする。
というもの。
<感想>
ここでようやく感想かいっ!!というツッコミはさておき…
めちゃくちゃだけど現実的。
分かりやすいほどにバカ。
いずれも褒め言葉(笑)
トム・ソーヤを取り戻す活動を手伝う女子大生(?)、野村友嬉のネガティブさ、そしてそこからの成長はリアリティあって素敵だった。
どんな陰惨な過去を持っていたかというのは語られなかったものの、暴力に怯える様だったり、トム・ソーヤ奪還活動にイラッとするくらい後ろ向きで弱音ばかり吐いてたり…現代人が抱える後ろ向きってこういうことと言えるくらい丁寧な人間描写が成されてた。
俺個人として太鼓判を押したいのは「富田林万作」。演じる役者は原さんいわく「松本電電丸の二代目」なのだが、俺なんかの枠にはめるのがもったいないくらいハジケててアクが濃い。彼を演じる鈴木君にはヒトリシバイナイトへのラブコールを贈った。あのウザさが一人芝居という舞台でどこまで通じるか、強い興味を持ってしまっている。
おっと話が逸れた。YAX直線の芝居というのは
「考えるな。感じるんだ。」
という言葉がよく似合う。小難しい伏線とかトリックといった緻密な構成はなく、シンプルにアツく、ウザく、バカを大真面目に貫くスタイルなのだ。YAX直線で芝居の何たるかを勉強させてもらった身として、俺は今なおそれを信条とし、ヒトリシバイナイトでの自らの芝居の血肉としている。
それから人間描写はリアルで、作者は弱い人間というのを分かってる!と感嘆してしまうほど。そしてその弱さをあったかく理解し、包み込んでくれる優しさがある。日々の暮らしに自らをすり減らしている人にこそ、劇団YAX直線の公演をオススメしたい。
「芝居は世界を救わない。
ただ、誰かを救う。」
その誰かとは、この芝居を観に来た方々と俺は思ってる。何故なら俺もその一人だから。
良い言葉じゃないか、うん。
ただ今回見えた弱点としては、ギャグの場面。プロレスを模した殺陣はド派手で、ゴチャゴチャ感が逆に武器になってるようなハイテンションぶりは確かに良かったのだが、ジェネレーションギャップを感じざるを得ない。
俺はちょうど原さんとどちらかといえば世代は近い方だから大方のネタは分かったけど、アニメネタに関しては今が旬のアニメネタをちょこっとでいい、入れてほしかった。
それに野球ネタは原さん本人が言うのが相応しいかなと。やっぱ好きの本気度って伝わっちゃうし…。
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