■ 背景と課題
日本経済は長期にわたりデフレ的傾向および実質賃金の伸び悩みに直面しており、国民の可処分所得の低下と需要不足が構造的問題となっている。一方で、政府の財政支出は主に社会保障費や既存債務の償還に費やされ、成長投資や需要喚起に十分に活用されていない。こうした状況において、国債を財源とした積極的な減税と内需刺激策は、有効な成長エンジンとなり得る。
■ 提言概要
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国債の新規発行を通じて、一般財源の補填および減税原資を確保する。
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減税対象は中間所得層および消費性向の高い層に限定し、可処分所得の向上を図る。
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公共投資(インフラ、住宅、地方活性化など)に重点的に支出し、乗数効果の高い分野に資金を集中する。
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日銀との協調の下でインフレ目標(2%程度)を共有し、名目GDP成長を継続的に促進する。
■ 制度草案(特例公債ルール整備)
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一般会計における恒常的支出(社会保障・教育等)への補填を目的とした特例公債の発行を制度化。
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名目GDP比を基準とした発行上限ルールを導入(例:公債残高の上限をGDPの200%までに抑制)。
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支出対象を明確に規定し、成長戦略との整合性を図る(例:インフラ、人材育成、住宅投資等)。
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減税財源としての特例公債活用を可能とする暫定条項(例:可処分所得増を目的とした5年間の暫定措置)。
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国会における毎年度のレビューと有識者審査会によるモニタリングを義務付け、財政の透明性と信認を確保。
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国債の償還期には、既存債務を新たな国債で借り換える方式(ロールオーバー)を明確に容認する。これは、日本の国債が自国通貨建てであり、かつ大半が国内投資家および日本銀行により保有されているという安定的な市場構造に支えられている。したがって、満期償還に際して新規発行を通じた借り換えを行うことは、財政上の混乱を招くことなく、資金繰りの継続性を保つ合理的な手段である。さらに、日銀が金利安定のために国債市場に関与する現行制度下では、長期金利の急騰などのリスクも抑制されている。
■ 期待される効果
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内需の活性化により名目GDP成長率が年率2~3%に上昇
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経済成長と税収の自然増による、PBに頼らない持続可能な財政基盤の構築
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実質賃金および雇用の改善、地方経済の活性化
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必要な時期に必要な支出を可能にする柔軟な財政運営への転換と、財務硬直化からの脱却
■ 財政指標に関する補足見解
現在の財政運営では、プライマリーバランス(PB)黒字化が財政健全化の指標として強調されているが、これは適切な経済状況評価を妨げる可能性がある。PBは政府の「収入-支出」に着目する単年度の指標に過ぎず、経済全体の動向や将来の成長力を反映しない。そのため、PB黒字化を政策目的とすることは、政府支出の過度な抑制を招き、かえって民間経済の縮小や税収減少につながる恐れがある。
本提言は、PBを財政健全性の「目標」ではなく、「結果」として捉える立場に立つ。より適切な指標としては、名目GDP成長率、国民の実質可処分所得、労働市場の質的改善などを複合的に用いるべきである。経済成長を通じて税収を増やし、持続可能な財政を築くアプローチこそが、日本経済に求められる真の健全性の基準である。
■ リスク管理と条件
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インフレの暴走を防ぐため、段階的かつ検証可能なスキームによる支出実行が必要
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国債発行の制限を定めたルール(例:名目GDP比率を上限とする)を策定し、市場の信認を維持
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減税および支出の効果を常時モニタリングし、民間主導の経済成長への移行を柔軟に判断
■ 結語
日本は内需回復と財政健全化を両立できる稀有な構造を持つ。現在の低金利・低インフレ環境下においてこそ、国債を活用した積極財政を通じ、民間活力を引き出す経済成長戦略を断行すべきである。これは、将来世代への負担ではなく、健全な経済基盤を形成する投資である。
