場所は元に戻って相模原市内山奥の廃村。

 山のような瓦礫の上に横たわる機械のような物体があった。それは今日の朝まで雲雀と呼ばれていたものだ。そしてそれに近づく黒いコートの中にこれまた黒のスーツを着た女性が一人。その手にはアタッシュケースを握っている。

「結局こうなっちまうんだね。あんたは。」

 女性はタバコの煙とともにため息を吐いた。

「しカた・・・ないダろ・・・ヨソうガイのこと・・・されたンだ・・・」

「鉄くずんなっても意識は有るんだなお前は。また何日か修理修理の毎日だな。これもまあ、しかたないだろ?」

 女性は鉄くずと化した雲雀を拾い集め、アタッシュケースに詰め、手のひらから火を放った。その火はあたかも粘り気のある液体のように瓦礫に貼り付き、雲雀から漏れ出た機械油を雑草や木材諸共焼き払った。

「お待ちなさい!」

 そこへ現れたのは既に傷だらけとなった三角だ。その手には鉄骨が剥き出しになった大きな瓦礫が掴まれている。

「ほう、そんなにボロボロになってもそこまで馬鹿力が出るのか。面白いな。」

 女性はコートの中からこぶし大の物を取り出し地面に転がして背を向けてこう呟いた。

 До свидания Благородный девушка. Дождитесь, когда мы воссоединиться.

――さようならお嬢様、また逢う日まで。――

「会えれば良いですわね・・・」

 三角の視界は白い光に包まれた。

 油断しましたわね。結局私も、まだまだってことなのですか。

――――――――――すみ―――――

――――みす―――おき――――――

――起きろ!三角霧江!

「・・・一方、ですの?」

 コートの女性が投げた手榴弾の閃光に、時間が経った今でも視覚が奪われているようだ。

「そうだよ。一方だ。」

「例の少女は生きていますわ、そして新たにコートを着た女性が現れて少女を回収して行きました。一方、貴女の罪はなしですわよ。」

「ありがとう、霧江。しばらく休んでいて。」

 視覚を失った三角を車の中へ移動した。

「ふふん、良かったわねぇ、罪が無くなって。」

「まあ、少しは嬉しいわね。ただそれと同時にただ酷く酷くイラついてるわ。まさかあんな風になっても生きてるなんてね。信じられる?いくら機械化人間だって言ったって私が全力で弾いた弾丸を全身に受けてズタボロの古い雑巾みたいになっていたのよ、機械油にまみれて転がってたのよ。それでも生きてるなんてね。あの娘は私の手で消す、テロリストに指定されていなければ殺せないなんて知らない、会ったら街のど真ん中だったとしても知らない、土の中だろうと知らない、どこでだっていつだって見つけ次第やってやる。」

 その瞳は輝きを捨てていた。なにか、彼女についてまだ知っていることがあるのだろうか。

「全く、貴女は昔から変わらないのねぇ。いいよ、体裁は整えてあげる。彼女について洗いざらい全て教えてよね。」

 一方の変化を見て佐原は少し不気味な微笑みを浮かべていた。

「それで、その雲雀って女の子のことはまだ公開してはだめよ。」

「分かってるって、正式に調査もしなきゃいけないしね。それに、貴女が倒すっていうんでしょ?」

「もちろん、任せたわよ。」

「はいはい、任されて。」

 やれやれ、どう言い訳をしたものかねぇ。上の連中はどうも頭が固いのが嫌だねぇ。

「それから、今回は私はなぁんにも見てないからね?現場にも来てなぁい。」

「ええ、私もだぁれも殺して無い。」

 2人はその場で笑いあっていた。

「昔に戻ったみたいだねぇ」

「そうね。高校の頃みたい。」