その映像の始まりはこうだった。

 カメラは地面を写し、2人の男の話し声を記録していた。

「我々は今、心霊現象が起こるという丹沢のホテル廃墟に来ています。現在はホテルの入口正面の広場に居ります。さてさてどんなホラー映画にも勝るような恐怖体験はできるのでしょうか」

「おいおい、フラグたてるなよ。俺達はただ興味に惹かれて、と動画投稿のために来てるんだって」

「気分って言うのも大切だろう?」

 カメラを持っているであろう男、仮にAとしよう。もう一人をBだ。彼が件のホテルのエントランスを写した。

 並の人間なら、そのホテルが纏う異様な雰囲気に気づいたであろう。だが、彼らは怖いもの知らずであった。

 Aが続けた。

「なかなか良い雰囲気だと思わないっすかね?」

「本当に探索するのかよ?崩れて来たりしないよな?」

「大丈夫だって、そんなにボロボロ崩れて来るんならここに建って無いかっ―――――――!!」

 笑っていたAの手が震えて画面が乱れていた。

 Aは叫びだした。

「おい、どうしちまったんだよ!おい!」

「あいつが――――あいつが呼んでる!!」

 Aはそのままカメラを投げ出しホテルの内へ走って行った。

 地面に叩きつけられたカメラの映像は激しく揺れ、もう一人の男Bがカメラを拾い上げてAを追った。

 ―――映像はここで終わりだ。

 その一瞬、ホテルの全体を写したところで映像を止めて見ると。

 居た居た、エントランスの屋根の上に。

 訪れる者を歓迎する者が

「例の白い女だ」

 私は背筋を冷や汗が流れるのをはっきりと感じた。