前回、水上状態、水中状態、浮上途中の状態について記載しましたが、前二状態ついては問題ないのですが、浮上途中の状態は艦が横転してしまうと状況になってしまってます。

なので、復原性の要である艦の重心G、浮心B、メタセンターMについてチョット考えてみたいと思います。

まず、浮上状態ですが、



この状態でのB,G,Mの位置を模式的に右図で表しています
各点の位置は正確に把握することは難しいのですが、相対関係は上図のようになっていると考えられます。
GはBの上方に位置していますが、これは全く問題がありません。MがGの上方に位置しているため正のの復原性能を有しているからです。(「船の復原性」を参照してください)

この状態で左右に揺らしても直ぐ直立するのでGM値はそこそこ良い値になっていると思われます。

次に水中状態を示すと



このようになっていると思われます。
各点の位置は浮上状態同様、正確に把握することは難しいのですが、相対関係は上図のようになっていると考えられます。

この状態ではメタセンターは無くなっていますが、BがGの上方に位置しており、これまた正の復原性能を有していると思われます。

同様に左右に揺らしても直ぐ直立しますので、BG値は良い値になっていると思われます。

さて、問題の浮上途中の状態ですが、



直立状態での吃水はWTB上面より下になっていますので、メタセンターは存在しています。
しかし、GM値が非常に小さいか、または、ほぼゼロ、ひょっとしたら負になっているかもしれません。
なので、左右のちょっとしたアンバランスで横転してしまうと思われます。

「潜水艦の復原性能について」 では一般的にGM値は正として説明しましたが、艦の形状やB,Gの位置次第では負になることも十分考えられます。

水中状態からMBTをブローして水上状態になり、そこで直立して水上航走をさせるためにはどうするべきか?

GM値が非常に小さいあるいは負となっているのであれば、ある程度の正のGMにしてやれば良いことになります。

そのためには、「潜水艦の復原性能について」で述べた、

GM=KB+BM-KG
から、
Gの位置を下げてBの位置を上げてやれば良いことになります。

ごく当たり前の話ですが、本艦に限って言えばそう簡単な話では無くなるのです。

一般的にはGを下げるために錘を艦底部に搭載します。
すると、艦重量が増して水上状態の吃水が深くなり、水上航走が水上航走にならなくなってしまいます。
普通ならば、浮力材を入れて補正するのでしょうが、本艦は、吃水以下の艦内はほぼMBTにしていますので、既に空気層なので浮力材を入れる余地がないのです。

錘を搭載できないのであれば、重量物を降ろすしかありません。
本艦は主電池の他に、排水ポンプ用に補助電池を主電池の上に搭載しています。
この補助電池が30gもあり、配置の都合上、前甲板直下に近い位置でかつ右舷にシフトした位置に搭載しています。

つまりいろんな意味で、復原性能劣化の原因となっているのです。




他にも対策は考えられそうですが、それは次回に・・・・