お久しぶりです。
もう、誰も見ていない気がしてなりません。すいません。
「おっさんと少年」の続きが、書きたくなりました。
咲さんの軍勢といい加減に戦ってみようかしら、とか。
人物の整理から始めないといけませんな(あー)
まずは外伝あたりから進めてみようかなぁ、とか思っています。
適当に、マイペースに、頑張ります。
3.少年少女
少年と少女が、手を繋いで空を見上げていた。
「まだ持つ?」
「無理っぽい」
彼らに表情はほぼ無い。淡々と言葉を発し、同時に顔を見合わせた。
「歪みが酷い」
「揺れが大きい」
少年の額には赤の、少女の額には青の丸い痣が光っていた。彼らは目にその光を映しあい、ぴたり、と互いの額をくっつけて、目を閉じる。
「狭霧は、完璧にヤクトの力を封じられない」
「ヤクトは、完璧にこの世に災厄をもたらせられない」
「それでも、時間が無い」
「もう、持たない」
二人は交互に言い合い、額を当てたまま目を開く。
「力を奪われ、この世界は終わる」
「残されたのは、この力だけ」
二人は、ゆるりと手を離す。すると、その間から紫の花が咲いた。
赤でも青でもない。紫の花。
ヤクトと狭霧の力が融合され、既に二人のものとはいえぬ力の結晶。
「これを狭霧が手に入れれば、ヤクトを消滅させられる」
「これをヤクトが手に入れれば、この涙帰界に災厄が齎される」
交互に口にしたのち、少年はゆっくりと指先を眼下にある広場に向ける。その先にあるのは、いつもの掲示板だ。
何も書かれていない白紙の掲示板に、じわ、と文字が浮かび上がる。
――選択せよ。
次に、少女が指先を広場に向けた。その先にあるのは、時計台。鐘のついている時計台だ。
その鐘が、ゆっくりと、徐々に速度を増して振り子のように動く。
――リーン、ゴーン。
「始めよう」
「終わらせよう」
彼らは口にする。びりびりと、世界が震えているのが分かる。
「楽しかった」
「楽だった」
少年と少女は顔を見合わせ、初めて、笑い合った。
※この話は、テラネッツが主催するノベルゲーム「東京怪談」の異界「涙帰界」を基にしたものです。
※第三話です。今回は、世界の根本にいる存在について。これで「涙落ちるまで」は終わりです。
次はOMCにて、シナリオ受注という形になります。受注開始は来週予定。大幅に予定が狂ってしまい、申し訳ございません。
最後までマイペースに、突っ走ろうと思っておりますので、宜しくお願いいたします。
目が覚め、時計を見る。時間は正午丁度を示していた。
「一日の半分が、終わってしまったか」
私は呟き、ははは、と笑う。昨晩、布団に入ったのは夜中零時。きっちり半分、布団の中で過ごしてしまった。
途中、何度だって起きるタイミングは合った。ぼんやりと外から音が聞こえてきた時とか、隣の部屋の住人が動き出す時とか。
しかし、私はそれらを尽く「まだいいか」と見逃してきてしまった。その結果、貴重な休日の半分を失ってしまった。
ぐるる、と腹が鳴る。12時間も何も腹に入れていないのだ、腹が減って当然だろう。
私は空腹に後押しされ、ようやく起き上がる。何か食べるものがあるだろうかと、冷蔵庫を覗き込む。
「……ははは」
今一度、乾いた笑いを吐き出す。見事なまでに、空。
単品では食べられないもの達なら、ちらほらはある。だが、食事として摂取できる類の食べ物が、何一つとしてないのだ。
少しの期待を胸に、冷凍庫を開ける。予想通り、何も無い。流石。
「仕方ない」
ぐるる、と鳴る腹に私は溜息混じりに服を着替える。何も無いのならば、買いに行かなければならぬ。
適当に着替えた私は、財布をポケットにねじりこみ、近くのコンビニへと向かうのだった。
コンビニで適当な食料を買った後、ふと目の前にファミレスがあるのに気付いた。
「あんなの、いつできたんだ?」
ぽつり、と小さな声で呟く。24時間営業、とも書いてある。真新しい壁を見るからに、つい最近できたばかりのものらしい。
小ぢんまりとした建物に、私は苦笑する。これができた事すら気付かぬほど、私は家だけを見据えて帰っていたのか、と。もっと周りを見る努力というものを持ったほうがいいようだ。
私はコンビニの袋とファミレスを見比べた後、ファミレスへと向かう。どうせなら、暖かな食事を取りたい。服は適当だし、無精ひげもそのままだ。だが、ぐるる、と鳴る腹は何者にも変えがたい。
ハンバーグ、オムライス、ステーキ、スパゲティ……いや、定食もいい。味噌汁とご飯の組み合わせなんて、中々食べれない。
私は様々なファミレスメニューを想像しながら、中へと入る。
「……おっさん?」
聞きなれた声に、私ははっとして当たりを見回す。店内に、圭の姿があったのだ。圭は私を見てにやりと笑うと、こっちに来いといわんばかりに手招いた。
「なんでここにいるんだ?」
「何でって……また携帯見てないのかよ」
不服そうに、圭はいう。そういえば、朝から一度も携帯に触っていない。面目ない、と頷くと、圭は溜息混じりに肩を竦める。
「近くに来たから、飯でも食おうってメールしたんだよ」
「それは丁度良かった。たまたま、ファミレスが目に入ったから」
私はそう言いながら、メニューを開く。空腹のせいか、どれもこれも美味しそうに見える。しばらくすると、店員が注文を受けに来た。私はハンバーグステーキ定食を、圭はオムライスやらスパゲティやらフライドポテトやら……とにかく、大量に注文していた。
「……それ、本当にたまたまだと思うか?」
店員が去って言った後、圭は尋ねてくる。
「え、何がだい?」
「たまたまファミレスが目に入ったって言ったじゃん」
ああ、そういえば。
「不思議な気がするよ。このファミレスがあった事すら、さっき知ったのに」
ははは、と笑いながら言うと、圭はにやりと笑う。
「今まで、気付いてなかったんだろ?」
「う、ま、まあ」
「それなのに、今日は気付いた」
「そういう事になるな」
圭は手元の水をぐいっと飲み干す。
「俺の念が届いたんじゃね? おっさん、ここに来いってな」
「それだと、携帯はいらないな」
冗談交じりに返すと、圭は「そうじゃなくてさ」と言う。
「おっさんの気持ちと、俺の気持ちがたまたま合って、念が通じたんじゃねーか? 腹が減ってすぐにでも食事がしたいおっさんと、待たされる事の嫌いな俺の」
なんだそれは、と思ったが、すぐに「なるほど」と頷く。
もしそのまま家に帰っていれば、携帯を見るだろう。そして、近くに圭がいることを知り、もう一度外出しなければならない羽目になる。ご飯を一緒に、と言っているのだから、折角購入した食事もそのままにして、だ。
「緊急の時に、便利そうだね」
「まあな。だから、もっともっと研ぎ澄ませておけよ」
「研ぎ澄ませろって」
私が苦笑すると、圭はにやりと笑いながら立ち上がる。フリードリンクを取りに行くようだ。
私はひとり残され、水を一口飲み、笑う。
研ぎ澄ませ方は分からないが、便利そうではある。何かがあった時、すぐに駆けつけることも出来る。
「念、か」
私は呟き、フリードリンクを取る圭に向かって念を送る。私もフリードリンクがついている。だが、ここで取りに行くのではなく、圭が取ってきてくれる様に念じてみるのだ。折角なのだから、研ぎ澄ます努力くらいはしてもいいだろう。
暫くして、圭は二つのコップを持って帰ってきた。私の念が、通じたのだろうか。
「ほい、おっさん。折角だから、とってきてやったぜ」
「どうもありがと」
差し出されたコップには、なみなみとコーラが注がれていた。
空腹にコーラ。炭酸のきつい、コーラ。甘いコーラ……。
本当はオレンジジュースが良かったのだが。
「念、感じた気がしてさ」
にっと笑う圭に、私は「そうだね」とだけ返し、コーラを口にした。
しっかりと通じなかったにしろ、とってきてくれたのは確かなのだから。
空腹に冷たく甘いコーラが、じゅわわわ、としみこんでいくのだった。
<その後無事に食事をし・了>
※お久しぶりです。色々あって、長らく休んでました。すいません。
OMCの方も気にかかるのですが、まずはブランクを埋めるように、と簡単なものから書いてみました。おっさんと少年です。
やっぱりこのコンビは書きやすい、とほっとしています。良かった、書けて(そのレベル)
これからも、ぼちぼちと進めていこうと思います。もちろん、まずはOMCから。
2.ヤクト
腹が減れば、腹を満たそうと食物を喰らう。
誰に教えられるわけでもない。そういうものだ、と本能が言う。
目の前に災いを与える対象があれば、災いを起こす。
誰から教えられたわけでもない。そういうものだ、と本能が言った。だから、起こす。
ただ、それだけなのだ。
三つ目の村に竜巻を叩きつけ、ヤクトは口元を綻ばせる。
破壊されてしまったものが、人が、心地よく彼の目に映っている。そうさせたのはヤクトであり、災厄を与えてやった、という達成感がある。
くつくつと、笑う。
息をするように、食事をするように、排泄をするように、ヤクトは災いを齎す。そういうものなのだ、という自覚がある。
それによって、物が壊れるとか、人が死ぬとか、そういうのはどうだっていいのだ。大事なのは災厄を与えるという行為であり、その後起こりうることはどうだっていい。
腹が減っている時、目の前に食べられる果物があれば食すだろう。食べたらどうなるか、なんて考えぬ。皮をどうしようなんて事も思わぬ。貪り喰らい付き、腹を満たして不必要なものは捨てる。
簡単な話だ。
「……お前が、ヤクトか」
名を呼ばれ、ヤクトははっとして振り返る。
女だ。黒髪の女が、いつの間にか背後に立っていた。
――気配など、感じなかった。
警戒しながら女を見つめる。彼女は巫女装束を身に纏っており、その身に通常の人が持ちえぬ力を宿している事が見受けられた。
「お前は、災厄を与えるものじゃな?」
警戒するヤクトに、女はそう尋ねる。
「その通りだ」
「何故」
「そう在るからだ。お前だって、腹が減ったら食事をするだろう?」
ヤクトが言うと、女は「なるほど」と言って頷いた。そして、形のよい唇を、にい、と笑みの形に変える。
「ヤクトよ。妾は、空なのじゃ」
――赤い唇。
ヤクトは、女が綺麗に引いている紅が動くのを、じっと見つめていた。
「妾は空じゃから、埋めなければならぬ。そう、お前と同じ。そう在るのじゃ」
じり、とヤクトは後ろに一歩下がる。
今まで、人間を沢山壊してきた。地に這い蹲る人々を見て、笑ってさえいた。そうするだけの力がヤクトにはあり、そうするべきと本能が告げていたから。
だが、今は違う。地に這い蹲らせたいなどという本能は、出てこない。この場は危険なのではないか、この女は人とは違うのではないか、と告げるばかり。
「少しばかし埋めても、すぐにまた消えうせる。妾を満たすほどのものが、ないのじゃ」
「……埋める?」
「言ったであろう? 妾は、空なのじゃ。通常の食物では埋められぬ穴がある。それは、お前たちのような存在でなければ埋められぬ」
くつくつ、と女は笑う。
「利害が一致した。お前が齎した災厄を受けた者達は、お前を何とかして欲しいという。妾は、お前で満たされたい。なんという、一致」
「そこに、俺は入っていないのか」
「入っておるではないか。空の中じゃ」
女はそう言い、じりじりと焼くとに迫る。ヤクトは「馬鹿らしい」と一言いい、地を蹴る。
――何を恐れているのだ、俺は。相手はたかが、人間ではないか。
飛べばいい。女の手に届かぬ場所へ、飛び去ってやればいい。そうするだけの力が、ヤクトには備わっているのだから。
そう考え、ヤクトは飛び立つ。が、一向に空に行かぬ。ただ空中を、浮いているだけ。
「何?」
小さく呟くヤクトに、女はからからと笑う。
「妾が何の準備をしないとでも?」
おんながそういい、左手を振りかざす。そこには、ほのかに青く光る花が刻まれていた。
――美しい。
不覚にも、ヤクトは思う。何と美しい花か、と。見たことも無い花だ。
――壊してやりたい。
にた、とヤクトは笑う。
美しいもの、綺麗なもの、整ったもの。それらは全て、災厄を齎すに相応しい。
本能が告げる。あれを壊す、と。
「よくぞ笑った! さあ、ヤクト。妾の空を満たすがいい!」
女は叫んだ。ヤクトは花を壊してやろうと、己の爪を伸ばす。
――どうやって壊してやろう。焼くか、飛ばすか、千切るか……いや、違う。
青い花。光る花。
美しく咲き誇る、左手甲の花。
――手折るのだ! この俺の手で、あの美しい花を、手折ってやるのだ!!
「うおおおおおおお!!!」
ヤクトは叫んだ。狙いはただ一つ、青い花。
女の左手甲に光る、美しい青い花。ただそれだけを目指して突き進む。
そうして気付けば、暗く、狭い、穴の中にいた。
居心地は悪くなかろう? という声が聞こえてきた。女の声だった。
「それにしても、なんと強大な力よ。これは、封じ込めるのも一苦労じゃな」
女はくつくつと笑っていた。ヤクトはぼんやりと穴の中を見回す。
何もない。
試しに火や水を召喚しようとしたが、何も起こらぬ。何もない空間内は、ヤクトの力を緩やかに吸収するばかりで、何も与えてはくれない。
「ここは、どうしたら、破壊できる……?」
小さな呟きは、穴の中にするりと消えていった。
そうして、ヤクトの心の中には、あの美しく咲き誇る青い花だけが、強烈に刻み込まれているのであった。
<ヤクト・了>
※この話は、テラネッツが主催するノベルゲーム「東京怪談」の異界「涙帰界」を基にしたものです。
※第二話です。今回は、ヤクトについて。災厄を与えるものだ、という本能を持っていること、穴吹一族に囚われる最初を描きました。
第三話は、二週間後の予定です。本編のシナリオは盆明けくらいかなぁ、と思ったり。
ぼちぼちとやりますので、宜しくお願いいたします。
1.穴吹狭霧
母が死んだという報せを、狭霧は呆然と聞いていた。
元々、生まれながらに病弱な人だった。何度も入退院を繰り返しており、いつまた倒れてもおかしくない、といわれていた。
それでも、母は定期的に魔を祓いに行っていた。魔を祓うのは穴吹家としての勤めではあったが、母は病弱。何故そんなにまでしなければならないのか、と母に何度も狭霧は問うていた。そのたび、母は優しく狭霧の頭を撫でる。
「そうしなければ、ヤクトが力を蓄えてしまうのよ」
母はそう言って、寂しそうに笑っていた。
撫でる左手甲には、花が咲いていた。赤い色をしており、彼岸花のようだ、と狭霧は思っていた。
「ヤクトって、何?」
「昔、ご先祖様が封じた、この世に災いを齎すものよ」
「それが、母様のここにいるの?」
花を差しながら問うと、母は「ここ、ではないけれど」と言って微笑んだ。
「穴吹の血には、穴があるの。穴が固定されたら、そこに魔を入れる。それを使う事によって、魔を祓う。魔は穴吹の動力源であり、また祓うべき相手だから」
難しい言葉に、狭霧はきょとんと小首を傾げる。母は「難しかったわね」と笑い、再び狭霧の頭を撫でた。
「花が出るのは、当主ただ一人だけ。もしかしたら、狭霧にも出るかもしれないわね」
「私にも、母様みたいな花が?」
「ええ。だけど、そうなったとしても、ずっと先の事よ」
母はそう言って微笑んだ。弱々しく。
狭霧は「なんだ」と思った。あの綺麗な花なら、すぐにでも手の甲に出てくれてもいいのに、と。
狭霧の心を読み取ったのか、母は真剣な眼差しで「駄目よ」と嗜める。
「穴が固定されていないうちに入れると、体に毒ですからね」
母はそう言っていた。そう、確かに、毒、だと。
――ああああああああ!!!
全身を引き裂かれるような痛みに、狭霧は叫んだ。いや、叫んでいないのかもしれない。喉の奥底から、何かを吐き出すように、叫んだ。
「間違いない、花だ」
「可哀想に。まだ、固定されてもいないだろうに」
大人たちの会話が聞こえる。
母が死んだと聞かされた直後に訪れた、激痛。体が熱く、じりじりと皮膚を苛める。香と思うと、内側からどろりととかされていくようで、吐き気が止まらない。
それ以上に、痛い。体が熱い。
「しかし、仕方がない。花のある者しか、あれを封じられないのだ」
狭霧の頭が、だんだん閉じていく。
何も考えられない。朦朧として、上手く意識を保てない。
「この部屋に寝かせ……」
「外から結界を……」
――暗転。
狭霧が目を覚ますと、そこは真っ白な四角い部屋だった。
「病院?」
呟いてからすぐ、左手甲にびりっとする痛みが走った。見れば、赤い花が咲いている。
「あ」
小さく呟き、狭霧は起き上がる。
母が死んだと聞かされた。花は一人しか持てぬと聞いた。ヤクトを封じていると聞いた。
ならば、そう。この花は母がなくなったという証であり、また己が花を継いでヤクトを封じ込める役目に就いたという事だ。
「ひっ」
怖くなり、狭霧はドアへと向かう。全身を襲っていた激痛はもうない。とにかくこの場所が嫌で、自分が怖くて、発散させたかったのだ。
だが、ドアはいくらガチャガチャとドアノブを動かしても開かなかった。ぴくりとも。
「やだ……開けて……開けてぇ!」
ドンドンとドアを叩きつける。すると、ようやくドアが開く。外から現れたのは、穴吹一族の親族。
「叔父様、私、怖い。ここは嫌なの。お家に帰りたい!」
「残念ながら、いけません」
聞いた事もない冷たい声に、狭霧は耳を疑った。ついこの間会った時は、気軽に「狭霧ちゃん」と呼んできた叔父。もっと優しい言い方だったのに。
「叔父様?」
「貴方様の中にいるものを封じ込める為にも、此処に居てください。出てはなりません」
丁寧な口調。どこかよそよそしい。
「どうして? どうしていつもみたいに、狭霧ちゃんって言ってくれないの?」
震える狭霧に、叔父は頭をたれる。
「貴方様が、穴吹家の当主になられたからでございます」
「いや」
「その左手甲の花が、何よりの証です」
「いやよ」
「申し訳ありませんが、部屋の中に。必要なものでしたら、何でも持ってまいりますので」
「いやぁぁぁぁ!」
狭霧は叫んだが、叔父は動じない。ただ、ベッドの方を指し示すだけ。
そうして、学ぶ。何度か脱走を試みたが、すぐに失敗に終わり、学ぶ。
穴が固定され、ヤクトを完全に封じるまでは、己の自由など存在しないのだと。
「ヤクト……ヤクト……!」
呪いのように口ずさむ。狭霧の人生を奪った、全ての元凶の名を。
ヤクトの力は、まだ使えない。穴が固定していない為、使ったら狭霧の体が砕ける可能性がある。
その為、狭霧とヤクトは賭けをする事となる。
狭霧の穴が固定されるのが先か、ヤクトの力が蓄えられるのが先か。
「もしヤクトの方が早かったら……散らしてやるわ」
己の力の全てを持ち、相手の力を飛散させる荒業。それを成し遂げても良いと思えるほど、ヤクトへの思いは強かった。
狭霧の精神力は、ヤクトによって保たれたといっても過言ではなかった。
<狭霧・了>
※この話は、テラネッツが主催するノベルゲーム「東京怪談」の異界「涙帰界」を基にしたものです。
※お久しぶりです。OMCでもお久しぶりになります。八月ごろに「涙帰界」の最終シナリオを出そうと思っておりまして、世界観の復習と思い出し(こら)を兼ねましてのノベルとなります。
全部で3話くらいを予定しておりまして、その後本編シナリオを出す予定です。
始めたものは終わらせなくてはならない、と思っております。なので、頑張ります。