1987年リリース。

このアルバムはリアルタイムで買って聴いたものなので、かなり思い入れがあります。

ですので、長くなりそうなので分けて書いていこうかな?と思います。


このアルバムは中々リリースされませんでした。
実に4年3カ月!
ファンはずいぶんと待たせれましたし、ヤキモキしていたと思います。


ですが、LEPPSの面々には様々な問題が押し寄せていたのです。

前作、炎のターゲットは全米だけで600万枚という記録的なセールスを樹立しました。本作ではそれを上回る事を宿命付けられていたから彼等のプレッシャーは凄かったと思います。

リック・アレンの悲惨な事故、プロデューサー選びの難航、スティーヴ・クラークのアルコール問題に伴うメンバー間の不和。
表面上の問題だけでもかなり不健全な状態でした。

副産物としてその期間に彼等が書き上げた曲数は約70曲と云われていて、スタジオでも更に曲作りに励んでいたそうです。

この盤がハードロックのカテゴリーを超えたセールス(全米だけで900万枚、世界では推定1.500万枚)を記録したのは、贅沢に70曲から絞り込んだ12曲を収録出来たからでしょう。


個人的な感想では『リフが折り重なり、ギターの音が丁寧に録られている』アルバムであり、かなり進化した音作りがされていました。
同時期にリリースされたピーター・コリンズが録ったクイーンズライクのオペレーション・マインドクライムよりも(音的にですが)プログレッシヴな出来だったと思います。

昔、本盤の曲を遊びでスタジオで弾いてみたのですが、かなり気持ち良い反面、ギタリストが最低3人はいないと再現出来ない事に気付きました(笑)


リックの事故(車の事故により左腕切断)は当初、脱退かWドラマー化をプレスは予測していましたが、シモンズが開発したキット(ペダルがタムタム、フロアと連動する電子制御のキット)により、リックが一人でこなすという感動的なカムバック劇を演出しました。

紆余曲折があり、本盤は中断を抜いても2年半に及びレコーディング期間がかかり、6都市を移動(オランダ、パリ、ダブリン、ロンドン、ニューヨーク、ロサンゼルス)しながら、世界的なトッププロデューサーとエンジニア(マット・ランジとナイジェル・グリーン)のスケジュールを押さえ、時間と金を贅沢に注ぎ込んで制作されました。

ジョー・エリオットの本盤リリース前の発言に俺は唖然としたのを思い出します。

『この作品はロック史に残る制作費を注ぎ込んだよ。なんせ200万枚売れたって赤字なんだから』

15億近くの制作費を使っている事になります(苦笑)

『それは無駄だ』
と思われるでしょうが、この異次元の出来栄えに文句は言えません。

実際セールスがそれを実証しています。


さて、収録曲ですが、

1 WOMAN

意外にもこの曲がアメリカでのファーストシングルでした。
当時MTVの台頭著しいアメリカでしたが、やはり広い国土をカバーするにはラジオのエアプレイがヒットには重要な鍵となります。

アメリカ人が短くフックのある曲を好むのはチャートを見れば一目瞭然なのに、策士ピーター・メンチが何故この長い曲を?と俺は思っていたのですが、この曲をこの長さでリリースする事を推したのは他ならぬメンバー達の意志だったそうです。

ジワジワと盛り上がるロックチューンで、リック・サヴェージのベースがズシッと効いています。

アームを効かせたフィル・コリンのギターソロは短いながらも素晴らしいです。

彼等(と言うかマット・ランジ)らしいコーラスの録り方も耳を魅きます。

この曲をアルバム1曲目に持ってきたのは飽られ易いアメリカ市場での長期セールスを見込んでの事だったのでしょうか?



2 ROCKET

この曲では、ブリティッシュロックの歴史を彼等なりに再現しています。

それは詞に顕著に表れていて、ビートルズ~クイーン~D.ボウイ~モット・ザ・フープル等を言葉遊びで登場させています。(曲名もROCKET=ROCK ITで言葉遊びですよね)

曲の中間部ではドラムロールの上にイコライズされたコーラスを左右に飛ばし、スイッチングを巧く使いフィル・コリンのギターが挿入されますが、ココはZEPのBLACK DOGを意識しているのだと思われます。

曲の長さを感じさせない抑揚が素晴らしく、俺は彼等の全キャリア中、今んトコこの曲が一番好きです。



多分続きます(^-^)